古老が残した帳面には、九十九話までの題目が、丁寧な字で書き並べられていた。最後の頁に、古老の筆で、こう記されていた。「百話目は、語らずに終える。語り終えれば、この会も終わる。終わらぬまま、続けることこそ、この会の本意である」
会を継いだ者たちは、この言葉を守り、以来、百話目を、あえて語らないことにしている。九十九話のまま、幾年も、会は続けられている。
この帳面は、今も本所のある家に伝わっている。もし、いつか誰かがこの帳面を手にすることがあれば、九十九話目の続きを、そっと書き加えてみるのもいいかもしれない。
ただし、百話目だけは、書かずに残しておくことを、この帳面は、静かに勧めている。