江戸怪談百物語 / 第41夜 / 浅草・古門跡

羅生門の跡

らしょうもんのあと
灯芯とうしんを一本、消す。

拾得物、一。麻布、白。縁の始末、共通。用途、経帷子と思われる。

浅草の外れに、崩れた石垣だけが残る場所があった。土地の者は「古門跡」と呼び、日暮れ以降は近づかないようにしていた。ある食い詰めた男、権六ごんろくが、雨をしのぐために、その石垣の陰に潜り込んだ。権六ごんろくは、火事で店を失い、今はもう、何もかもが底をついていた。

拾得物、二から七。

同種。老婆、選びながら集める。

先に一人の老婆が、何かを引き剥がすように、石垣の隙間から古い布を集めていた。老婆は、「これを売って、飯を食う」と言った。権六ごんろくは、老婆が集めている布を、よく見てみた。どれも似たような、質素な白の麻布で、縁の始末の仕方が、すべて同じだった。この土地に埋められた者たちの経帷子だけを、選んで集めていたのだった。

拾得物、記録者への引き渡しなし。

権六ごんろくはその言葉に、何も言い返せなかった。老婆にとって、それは、亡くなった者たちを、もう一度、誰かの役に立つものに変えてやる、供養くようの一つの形だったのかもしれない。夜が明け、権六ごんろくは老婆の姿がどこにもないことに気づいた。ただ、自分の手には、いつのまにか、老婆が集めていたはずの経帷子の布が、握られていた。

権六ごんろくはそれを、古着ふるぎとして売ることはできなかった。

この話について
編者の後書き
拾い集めた布を「拾得物、一、二……」と記録する形式にした。無機質な記録の言葉が、経帷子という発見によって、供養くようという意味に転じる落差を作っている。
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