本所の百物語の会で、とうとう百話目が語られ、最後の灯芯が消された晩のことである。座敷は、真の闇に包まれた。集まった者たちは、何かが現れるのを、息を潜めて待った。
しばらくして、誰かが、恐る恐る、行灯に新しい灯りをつけた。座敷には、いつもと変わらぬ、集まった者たちの顔だけがあった。何も起こらなかったことに、誰もが安堵と、少しの拍子抜けを感じた。
主人が、ふと思いついたように言った。「せっかくだから、百一話目を、誰か語ってみないか」誰も、それには応じなかった。
灯芯はもう、一本も残っていなかったからである。