両国のある賭場が潰れた後、その跡地から、埋められた千両箱が見つかったという噂が広まった。噂を聞いた欲深い男、久蔵が、夜な夜な跡地を掘り続けた。久蔵は、若い頃に博打で身を持ち崩し、女房と子に去られていた。
幾晩も掘っても、何も見つからなかった。ある晩、久蔵の鍬が、何か硬いものに当たった。出てきたのは、千両箱ではなく、古い甕だった。甕の中には、賭場で使われていたとおぼしき、無数の木の駒札が詰まっていた。
久蔵は、その駒札を、両替商に持って行こうとしたが、途中で気が変わり、近所の子供たちに、駒として配ってしまった。金にならないなら、誰かの遊び道具になればいい、と思ったからだった。
数日後、久蔵の夢に、賭場で命を落としたとされる何人もの客たちが現れた。だが、その顔は、怒っているようには見えなかった。むしろ、子供たちが楽しそうに駒で遊んでいる様子を、遠くから眺めているような、穏やかな顔だった。久蔵は目を覚まし、それを見て、駒札を配ったことを、後悔しないことにした。取り戻せるものは、金では買えない。
だが、誰かを喜ばせることならできる、と久蔵は思うようになった。