本所の百物語の会に、ある編者が、自らも一話を語ろうと座に加わったことがあった。編者は、これまで集めた九十八話について、思うところを述べた。「一つひとつの話に、誰かが積み重ねてきた物語の型を借りている。それでも、借りた型の中に、自分なりの見方を残せたかどうか、今も分からない」
集まった者たちは、それを黙って聞いていた。編者は続けた。「妖怪も、怪談も、結局は、人がどう畏れ、どう懐かしみ、どう見送るかの記録なのだと思う。この座に加われたことを、ありがたく思っている」
編者はそう言って、静かに一礼した。
灯芯は、まだ二本、残っていた。