本所の百物語の会は、幾年もかけて、この土地の様々な語り手を集めてきた。ある年、会を長く支えてきた古老が、最後の会を開くことを決めた。
古老は、これまで語られてきた話を、一つ一つ数え直した。九十九話まで、たしかに語られてきた。古老は、最後の一話だけを、自分で語ることに決めた。
古老が語り終えたとき、灯芯はすべて消えていた。集まった者たちは、闇の中で、しばらく黙って座っていた。誰かが、そっと新しい灯りをつけた。古老の姿は、そこにはなかった。
ただ、古老がいつも座っていた場所に、一冊の古い帳面だけが、静かに置かれていた。