本所の長屋の縁の下で、蟻の行列が、いつまでも同じ場所を回り続けているのを、子供が見つけた。子供が行列を崩してみても、蟻たちは、すぐに元の輪を作り直した。
近所の子供たちは、これを面白がって、代わる代わる行列を崩しに来るようになった。蟻たちは、崩されるたびに、前よりも早く、輪を作り直すようになった。まるで、子供たちとの競争を、楽しんでいるかのようだった。
ある日、一番負けん気の強い子供が、「今日は絶対に直させない」と意気込んで、行列の上に、大きな石を置いてしまった。翌朝、石をのけてみると、蟻たちは、石の周りを、大きく迂回する、前よりも複雑な形の輪を、作り上げていた。
子供たちは、それを見て、すっかり蟻たちに一本取られた気持ちになった。それ以来、子供たちは、蟻の行列を崩すのをやめ、代わりに、行列がどんな形になるか、毎朝観察するのを、新しい遊びにするようになった。
長屋の縁の下では、今日も、子供たちと蟻たちの、静かな知恵比べが続いている。