一の声、上。二の声、中。三の声、下。三つ重なって、一つの和音になる。ただ、どこか一音欠けていて、綺麗に鳴りきらない。
浅草で長く産婆を務めるお久という女がいた。ある家で三つ子が生まれるという難産を、お久は一人で取り上げた。生まれた三人の子の泣き声が、三人ともまったく同じ調子だったことに、お久は気づいていた。お久には、若い頃、三味線を習っていた時期があった。三人の泣き声を、音の高さで聞き分けてみると、長男は「上」、次男は「中」、三男は「下」の音に近かった。
三人、同じ日に熱を出す。三つ子は、その後も驚くほどよく似た育ち方をした。一人が熱を出せば、残りの二人も同じ日に熱を出し、一人が峠を越えれば、残りの二人も同時に治った。
三人、それぞれ別の家へ。三人が、それぞれ別の家に嫁ぎ、初めての子を産むことになった日、お久はすでに年老いていたが、三人がほぼ同じ時刻に産気づいたという知らせを受けた。
一の産声、二の産声、三の産声。
遠く離れた場所で、三つの産声が、同時に上がったと聞いたとき、お久は、あの晩、宙に浮いていた和音が、ようやく鳴りきったのだと、一人で静かに思った。