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妖怪の分類

都道府県以外の軸で妖怪を分けてみた。基本の考え方は、民俗学者・小松和彦こまつかずひこの妖怪起源論を参考にしている。柳田國男やなぎたくにおは妖怪を「前代の神が零落れいらくしたもの」としたけれど、小松和彦こまつかずひこはそれに対して「妖怪は神と並んで最初から存在していて、人間に必要とされ続ける」と論じている。この分類も、どちらが正しいかを決めるためのものではなく、それぞれの妖怪がどんな不安・記憶・信仰から生まれたと考えられているかを並べてみるためのもの。

ひとつの妖怪が複数の性質を持つ場合もあるけれど、ここでは一番説明の軸になっている性質ひとつを選んで分類した。

この10分類を、民俗学のハレ・ケ・ケガレという別の軸で数え直した集計がある。結果は妖怪は、日常に出るにまとめた。

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自然由来神の零落神社仏閣人間由来動物変化
憑き物筋・家境界・道都市型来訪神・儀礼正体不明
自然由来(29体)

天候・地形・水中の生きものなど、自然そのものが妖怪として立ち現れたもの。小松和彦こまつかずひこは妖怪を「妖怪現象(出来事)→妖怪存在(原因)→妖怪表象(造形化された姿)」という三段階で説明しており、このカテゴリはその最初の段階、人が制御できない自然現象に名前と姿が与えられる過程に近い妖怪群だと思う。一番古いタイプの妖怪だと思う。

つらら女つららおんな
青森県
雪女ゆきおんな
山形県
センポク・カンポクせんぽく・かんぽく
富山県
八岐大蛇やまたのおろち
島根県
大蝦蟇おおがま
山口県
児啼爺こなきじじい
徳島県
猿猴えんこう
高知県
ひょうすべひょうすべ
佐賀県
磯女いそおんな
長崎県
セコせこ
大分県
ケンムンけんむん
鹿児島県
キジムナーきじむなー
沖縄県
河童かっぱ
全国区
狐火きつねびきつねび
全国区
妖霊星ようれいぼしようれいぼし
全国区
不知火しらぬい
佐賀県
雷獣らいじゅう
全国区
海坊主うみぼうず
全国区
小豆婆あずきばばあ
全国区
天火てんか
全国区
畳叩きたたみたたき
全国区
しらみゆうれんしらみゆうれん
全国区
鮭の大助さけのおおすけ
全国区
古山茶の霊ふるつばきのれい
全国区
濡れ女ぬれおんな
全国区
金霊かねだま
全国区
山びこやまびこ
全国区
川姫かわひめ
全国区
一反木綿いったんもめん
鹿児島県
神の零落れいらく・信仰由来(10体)

かつて祀られていた神や、山岳信仰・職能集団の記憶が、時代を経て妖怪や零落れいらくした神として語られるようになったもの。柳田國男やなぎたくにおは妖怪を「前代の神が零落れいらくしたもの」としたが、小松和彦こまつかずひこはこれに異を唱え、妖怪は神と並んで最初から存在しており、人間に必要とされ続ける存在だと論じている。祀られなくなった神と、今も祀られている神が同じ棚に並んでいる、というのがこの分類の面白いところだと思う。

一本だたらいっぽんだたら
和歌山県
天邪鬼あまのじゃくあまのじゃく
全国区
白澤はくたくはくたく
全国区
夜刀神やとのかみ
茨城県
天狗てんぐ
全国区
一つ目小僧ひとつめこぞう
全国区
山姥やまんば
全国区
オシラサマおしらさま
全国区
厠神かわやがみ
全国区
猿神さるがみさるがみ
全国区
神社仏閣の妖怪(9体)

特定の神社・寺院に祀られる、あるいはその境内を舞台にする、信仰の場と地続きの妖怪たち。小松和彦こまつかずひこがいう「妖怪は神と並んで最初から存在していた」という話が、いちばん実感としてわかるカテゴリーだと思う。ここに入っているものは、祟りの話よりも、今も現地に行けば会える、という現在進行形の存在感の方が強い。

茂林寺もりんじ釜(分福茶釜)もりんじのかま
群馬県
白蔵主はくぞうす
山梨県
両面宿儺りょうめんすくな
岐阜県
一目連いちもくれん
三重県
鉄鼠てっそ
滋賀県
長壁(刑部姫)おさかべひめ
兵庫県
元興寺がんごうじ(ガゴゼ)がごぜ
奈良県
温羅うら
岡山県
三吉鬼さんきちおに
秋田県
人間由来(14体)

怨霊、鬼になった人間、朝廷にまつろわなかった者たちの異形化など、実在した(とされる)人間が起源とされる妖怪。小松和彦こまつかずひこは妖怪を「人間と人間との関係のなかから立ち現れてくる、自分(たち)の否定的分身」と表現している。祟る側にもそれなりの事情がある、と思わせる話が多いのも、このカテゴリの特徴だと思う。

コロポックルころぽっくる
北海道
黒塚くろづか
福島県
二口女ふたくちおんな
千葉県
舞首まいくび
神奈川県
紅葉狩(鬼女紅葉)もみじがり
長野県
酒呑童子しゅてんどうじ
京都府
七人同行しちにんどうぎょう
香川県
油すましあぶらすまし
熊本県
羅城門らじょうもんの鬼らじょうもんのおに
京都府
道場法師どうじょうほうしどうじょうほうし
愛知県
土蜘蛛つちぐも
奈良県
山男やまおとこ
全国区
手の目てのめ
全国区
蝶化身ちょうけしん
全国区
動物変化(16体)

実在する動物が人間や別の何かに化けるという妖怪。小松和彦こまつかずひこの整理では、自然由来の妖怪が変質し、人工物由来の妖怪(付喪神つくもがみ)が登場する以前の段階に位置づけられることが多い。人間に一番近い場所で化けている妖怪たち、という気がする。

タンタンコロリンたんたんころりん
宮城県
玉藻前(殺生石)たまものまえ・せっしょうせき
栃木県
建長寺の狸和尚けんちょうじのたぬきおしょう
神奈川県
団三郎狸だんざぶろうだぬき
新潟県
隠神刑部いぬがみぎょうぶ
愛媛県
猫又ねこまた
全国区
火車かしゃかしゃ
全国区
野衾のぶすま
全国区
化け猫ばけねこ
全国区
のっぺらぼうのっぺらぼう
全国区
竹伐狸たけきりだぬき
京都府
猩々しょうじょう
全国区
獺かわうそ
全国区
絡新婦じょろうぐも
全国区
旧鼠きゅうそ
全国区
黒眚(山あらし)しい・やまあらし
全国区
憑き物筋つきものすじ・家の妖怪(10体)

特定の家筋いえすじや、家という空間の中で語られる妖怪。小松和彦こまつかずひこは『憑霊信仰論ひょうれいしんこうろん』で、貨幣経済が浸透した近世社会における富をめぐる妬みや不安が、狐持ちきつねもち・犬神持ちいぬがみもちのような憑き物筋つきものすじの伝承を生んだと論じている(アメリカの人類学者G.フォスターの「限定された富げんていされたとみのイメージ」を援用)。福を呼ぶ妖怪と、差別につながった伝承が同じ分類に入っているのは、正直なところ落ち着かない。

座敷童子ざしきわらし
岩手県
牛蒡種ごぼうだねごぼうだね・ごんぼだね
福井県
おとら狐おとらぎつね
愛知県
倉婆くらばば
宮崎県
付喪神つくもがみつくもがみ
全国区
家鳴やなり
全国区
垢嘗あかなめ
全国区
枕返しまくらがえしまくらがえし
全国区
犬神いぬがみ
高知県
赤シャグマあかしゃぐま
全国区
境界・道の妖怪(5体)

峠、辻、夜道など、村と外部を隔てる境界に現れる妖怪。民俗学者・宮田登みやたのぼるの「境界論きょうかいろん」に沿った分類。村の内と外を分ける線が、そのまま妖怪の出現場所になっている、というのは今回並べてみてよく分かった。

袖引小僧そでひきこぞう
埼玉県
べとべとさんべとべとさん
静岡県
ぬりかべぬりかべ
福岡県
見越し入道みこしにゅうどうみこしにゅうどう
全国区
砂かけ婆すなかけばばあ
全国区
都市型(3体)

都・城・城下町など、人工的に築かれた権力の空間に現れる妖怪。自然の中の妖怪とは異なり、政治・権力そのものへの畏れや不安を映していると思う。

平将門(首塚の伝承)たいらのまさかど
東京都
茨木童子いばらきどうじ
大阪府
鵺ぬえ
京都府
来訪神らいほうしん・儀礼(2体)

年中行事の中で、決まった時期に家々を訪れるという神格・妖怪。怖い格好をしているのに、来てくれないと困る、という矛盾を抱えた存在だと思う。

なまはげなまはげ
秋田県
あまめはぎあまめはぎ
石川県
正体不明・怪異譚系(28体)

出自の理論的な説明がまだついていない、あるいは実録怪異譚として記録されたことそのものに価値がある妖怪。無理に起源を当てはめないのも、この台帳の誠実さのつもりでいる。

カカベかかべ
岩手県
わいらわいら
茨城県
天蓋藪てんがいやぶ
和歌山県
ぬるぬる坊主ぬるぬるぼうず
鳥取県
山本五郎左衛門さんもとごろうざえもん
広島県
がしゃどくろがしゃどくろ
全国区
青行燈あおあんどんあおあんどん
全国区
ろくろ首ろくろくび
全国区
橋姫はしひめ
京都府
目目連もくもくれん
京都府
陰摩羅鬼おんもらき
京都府
輪入道わにゅうどう
京都府
泥田坊どろたぼう
全国区
七人ミサキしちにんみさき
高知県
鎌鼬かまいたち
全国区
姑獲鳥(産女)うぶめ
全国区
牛鬼うしおに・ぎゅうき
愛媛県
見上げ入道みあげにゅうどう
新潟県
骨女ほねおんな
秋田県
毛羽毛現けうけげん
京都府
以津真天いつまで
京都府
狂骨きょうこつ
京都府
邪魅じゃみ
京都府
うわんうわん
京都府
小豆洗いあずきあらい
全国区
釣瓶落としつるべおとし
京都府
件くだん
全国区
ぬらりひょんぬらりひょん
全国区