件(くだん)は、牛から生まれるとされる人面牛体の妖獣。生後数日のうちに人語で重大な予言(豊作・疫病・戦争の勝敗など)を語り、その直後に死ぬとされ、予言は必ず的中すると信じられてきた。文献上の記録は文政2年(1819年)の日記『密局日乗』に牛の子として生まれた件の記述があり、天保7年(1836年)には京都府宮津市の倉梯山に出現したという瓦版が現存する。幕末の錦絵「件獣之写真」にも同様の記述がある。明治には日露戦争を、昭和には太平洋戦争の終結を予言したという風説が各地に広まった。岡山県出身の作家・内田百閒は1922年、短編小説『件』を発表している。水木しげるも自身の『妖怪事典』で、幼少期に父から聞いた話として件を取り上げ、丸みを帯びた愛らしい人間牛として描いている。証文の決まり文句「よって件の如し」の語源とする説が広く流布しているが、漢文学者・白川静はこれを俗説とし、字の成立は別系統だと指摘している。