妖怪図鑑 / 全国区 / 予言獣(全国区) / 分類:正体不明・怪異譚系

件

くだん
複数確認
生まれて三日で死ぬという設定が、逆にこの妖怪を長生きさせている。

件(くだん)は、牛から生まれるとされる人面牛体の妖獣。生後数日のうちに人語で重大な予言(豊作・疫病えきびょう・戦争の勝敗など)を語り、その直後に死ぬとされ、予言は必ず的中すると信じられてきた。文献上の記録は文政2年(1819年)の日記『密局日乗』に牛の子として生まれた件の記述があり、天保7年(1836年)には京都府宮津市の倉梯山に出現したという瓦版が現存する。幕末の錦絵「件獣之写真」にも同様の記述がある。明治には日露戦争を、昭和には太平洋戦争の終結を予言したという風説が各地に広まった。岡山県出身の作家・内田百閒は1922年、短編小説『件』を発表している。水木しげるも自身の『妖怪事典』で、幼少期に父から聞いた話として件を取り上げ、丸みを帯びた愛らしい人間牛として描いている。証文しょうもんの決まり文句「よって件の如し」の語源とする説が広く流布しているが、漢文学者・白川静はこれを俗説とし、字の成立は別系統だと指摘している。

おまけ(台帳データ)
伝承地
西日本を中心に、京都府・岡山県・広島県・兵庫県など各地に伝承が分布
別名・異名
特になし
時代
文献上の初出は江戸後期(1819年)、明治・昭和にも度々出現譚が語られる
動物との関係
特に確認できていない
類似・関連妖怪
内田百閒『件』、小松左京『くだんのはは』、水木しげる『妖怪事典』での紹介
学術的解釈
『よって件の如し』の語源説は、柳田國男やなぎたくにおも由来を明言していない。白川静は『件』の字の成立自体が別系統であり、この語源説を俗説としている
柳田國男やなぎたくにおの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
小松和彦こまつかずひこの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
現代文化
世情不安時にネット上で『件の予言があった』と語られることがあり、現代でも繰り返し語り直されている
伝承の現況
内田百閒・水木しげるを経て、現代の都市伝説にまで生き続けている稀有な例だと思う