家鳴は、誰もいないのに家屋がきしみ、鳴る現象。柱や梁、床板が理由もなく音を立てる。鳥山石燕は『画図百鬼夜行』で、小鬼たちが家を揺すっている姿として描いた。石燕の絵では、四、五匹の小鬼が家の土台に取りついて力を込めている。
現象としての説明はついている。木材の乾燥収縮、温度差による膨張、地盤の微細な沈下。特に新築の家では、材木が環境に馴染むまで盛んに音が鳴る。いわゆる「家が落ち着く」までの過程である。
それでも、この現象に名前がついているのが面白い。夜中に誰もいない部屋で音がしたとき、その原因を説明できなければ、人は不安になる。家鳴という名前は、その不安に居場所を与える。小鬼のせいだと分かれば、少なくとも得体の知れない何かではなくなる。
井上円了の分類でいえば、これは物理的に説明のつく「仮怪」にあたる。ただ、説明がつくからといって、名前をつける必要がなかったわけではないと思う。