妖怪図鑑 / 全国区 / 動物の変化 / 分類:動物変化

化け猫

ばけねこ
複数確認
行灯あんどんの油を舐める。この一点だけで、猫は妖怪にされてしまった。

化け猫は、猫が妖怪に変化したもの。猫又と混同されることが多く、区別は曖昧である。猫が妖怪視された理由として、夜行性であること、眼が光ること、時刻によって瞳の形が変わること、暗闇で背中を撫でると静電気が起きることなどが挙げられる。俗信ぞくしんとして広く知られるのが「行灯あんどんの油を舐める」というもので、江戸時代の百科事典『和漢三才図会わかんさんさいずえ』にも、猫が油を舐めるのは怪異の兆候だと記されている。ただしこれには現実的な説明がある。近世の灯火には安価な鰯油などの魚油が使われており、猫がそれを好んで舐めたためである。当時の日本人の食生活は穀物・野菜が中心で、その残りを与えられる猫は、肉食動物でありながら脂肪分が不足していた。それを補うために油を舐め、行灯あんどんに向かって二本足で立ち上がる。その姿が妖怪視された。各地に化け猫騒動が伝わり、佐賀の鍋島、久留米の有馬、岡崎が三大猫騒動とされる。ただし岡崎の話は鶴屋南北の歌舞伎『独道中五十三駅』による創作であるため、代わりに徳島のお松大権現を入れる数え方もある。

おまけ(台帳データ)
伝承地
全国(佐賀・鍋島、久留米・有馬、徳島・お松大権現などに著名な伝承がある)
別名・異名
猫の怪、怪猫とも
時代
江戸時代に俗信ぞくしんとして定着。猫を妖怪とみる見方自体はさらに古い
動物との関係
猫。油を舐める行動という、実際に観察された生態が妖怪化の根拠になっている
類似・関連妖怪
猫又(区別は曖昧で、しばしば同一視される)
学術的解釈
行灯あんどんの油を舐める行動は、魚油の普及と猫の栄養不足という当時の生活条件から説明できる。妖怪の背後に生活史が透けて見える例として興味深い
柳田國男やなぎたくにおの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
小松和彦こまつかずひこの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
現代文化
歌舞伎の化猫物、講談、映画と、江戸から現代まで繰り返し題材にされてきた
伝承の現況
三大猫騒動の地には、今も関連する社や史跡が残る