鎌倉五山第一位・建長寺の僧に扮した狸が、諸国を旅して人を化かすという民話。建長寺という権威ある寺の名を出せば、どこの村でも僧として遇される。その仕組みを利用したという筋立てで、狸の知恵が寺の格の高さを逆手に取っている点が面白い。この話型は鎌倉だけにとどまらず、静岡県川根本町や山梨県身延町など、各地に「たぬき和尚」の民話として伝わっている。建長寺そのものは、けんちん汁(建長汁)の発祥としても知られる。精進料理を作る寺と、そこに化けて入り込む狸という取り合わせには、寺の台所という日常的な場所への想像力が働いているようにも見える。