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狐火きつねび

きつねび
複数確認
夜の山に、提灯ちょうちんの列が見える。数えると、行くたびに数が違う。

狐火きつねびは、夜間の野山に現れる正体不明の火。提灯ちょうちんや松明のような光が、一列に連なって見えたり、点いたり消えたりするという。名の通り狐の仕業とされることが多く、狐が口から吐く、尾を打ち合わせて起こす、髑髏をくわえて光らせる、など各地でさまざまに語られる。

最もよく知られているのは、狐の嫁入りの伝承だろう。夜の山道に提灯ちょうちんの行列が見えると、狐が嫁入りをしていると言われた。晴れているのに雨が降る天気雨を「狐の嫁入り」と呼ぶのも、同じ発想の延長にある。どちらも、あるはずのないものが同時に起きる現象を指している。

王子稲荷(東京都北区)には、大晦日の夜に関東中の狐が集まり、装束榎の下で身支度をして参詣するという伝承があり、その際の狐火きつねびの数で翌年の作柄さくがらを占ったという。歌川広重うたがわひろしげの浮世絵『王子装束ゑの木大晦日の狐火きつねび』にも描かれている。

正体としては、リン化水素の自然発火、球電現象、光の屈折による錯覚など、複数の説明が試みられてきた。ただ、狐火きつねびを見たという話が各地に残っているのは、単なる見間違いというより、夜の山に何かがいると考える方が自然だった時代の感覚が、そこに含まれているからだと思う。

おまけ(台帳データ)
伝承地
全国(王子稲荷の狐火きつねび、越後の狐の嫁入り行列などが特に知られる)
別名・異名
狐の提灯ちょうちん、狐の嫁入りとも呼ばれる。各地に姥ヶ火・叢原火・釣瓶火など、同系統の怪火が多数ある
時代
中世以降の記録が多い。浮世絵に描かれたのは江戸後期
動物との関係
特に確認できていない
類似・関連妖怪
天火、不知火(いずれも正体不明の怪火として同系統)
学術的解釈
怪火の伝承は全国に分布し、地域ごとに呼称と原因の説明が異なる。リン化水素の自然発光説などが提示されているが、決定的な説明はついていない
柳田國男やなぎたくにおの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
小松和彦こまつかずひこの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
現代文化
新潟県阿賀町・つがわ狐の嫁入り行列など、観光行事として再現している地域がある
伝承の現況
王子稲荷の狐の行列は、大晦日の行事として現在も続けられている