白澤は、中国由来の瑞獣。牛あるいは獅子のような体に、六本の角と九つの目を持つとされる。人語を解し、万物に精通するという。
『瑞応図』などによれば、黄帝が東方を巡狩した際に白澤が現れ、天下の鬼神について語った。その数は一万一千五百二十種。黄帝はこれを図に描かせ、『白澤図』として世に伝えたという。つまり白澤は、世界最古の妖怪図鑑を口述した存在ということになる。
日本には江戸時代に広く知られ、旅の護符として用いられた。白澤の絵を枕元に置く、道中に携える、という習慣があり、疫病や魔を退けるとされた。妖怪を知り尽くしているからこそ、妖怪を退ける。この理屈が面白い。
厳密には妖怪ではなく瑞獣、つまり吉兆を示す聖なる獣である。ただ、日本では妖怪画集に描かれ、妖怪の一種として扱われることも多かった。この台帳でも、妖怪と人間の関係を考える上で外せない存在として記録しておく。
この台帳がやっていることも、結局は白澤図の真似事なのかもしれない。妖怪の名を集め、記録し、並べる。それが何の役に立つのかと言われれば、たぶん、知っているだけで少し安心する、という程度のことである。