鎌鼬(かまいたち)は、つむじ風とともに現れ、鎌で切ったような傷を人につけるとされる怪異。傷は痛みも出血もほとんどなく、後になって激痛や大出血が生じることもあるという(尾張藩士・三好想山の随筆『想山著聞奇集』)。地域によって解釈が異なり、信州では3匹一組で、1匹目が人を転ばせ、2匹目が皮膚を切り、3匹目が血止めの薬を塗るため痛みを感じないという伝承がある。愛知県東部では「飯綱(いづな)」、四国では「野鎌(のがま)」と呼ばれ、それぞれ別の由来譚を持つ。明治時代には、旋風の中心にできる真空によって皮膚が裂けるという科学的な説明が広まり、井上円了もこの真空説を紹介していた。ところが同時代の物理学者・寺田寅彦は、随筆「化物の進化」の中で「この説は物理学者には少しふに落ちない」と述べ、実際には強風で飛んだ木片や砂粒が高速で衝突して皮膚が切れるのだと反論している。