京都府 / 近畿地方 / 橋の守り神・鬼女 / 分類:正体不明・怪異譚系

橋姫

はしひめ
複数確認
同じ名前の中に、待つ女と、鬼になった女が、両方いる。

橋姫は、『古今和歌集』(905年)にある「さむしろに衣かたしき今宵もや我をまつらん宇治の橋姫」という詠み人知らずの歌に由来する。この歌の中の橋姫は、宇治で恋人を一人で待つ女性の比喩であり、『源氏物語』宇治十帖にも同様の情緒で引用される、いわば可憐な存在だった。一方、『平家物語』剣巻つるぎのまき(異本)では、まったく別の顔を見せる。ある公家の娘が嫉妬に狂い、貴船神社に七日参って生きながら鬼になることを願い、髪を五つに分けて角とし、顔と体を朱と丹で赤く染め、鉄輪を逆さに被って三本足に松明を灯し、宇治川に二十一日間浸かって鬼女になったという。この姿は後の「丑の刻参り」の原型とされる。鬼となった橋姫は、源頼光みなもとのよりみつ四天王の一人・渡辺綱わたなべのつなと一条戻橋いちじょうもどりばしで遭遇し、正体を見破られて腕を斬られたと伝わる。

おまけ(台帳データ)
伝承地
京都府宇治市(宇治橋・橋姫神社)
別名・異名
宇治の橋姫
時代
和歌としての初出は905年、鬼女としての物語化は中世(平家物語系異本)
動物との関係
特に確認できていない
類似・関連妖怪
貴船神社の丑の刻参り、渡辺綱わたなべのつなと羅生門の鬼の伝承
学術的解釈
橋姫は元来、橋の両側(此岸と彼岸)の境界を守る水神信仰の対象であり、後世の説話で嫉妬の鬼女という性格が付加されたという解釈がある
柳田國男やなぎたくにおの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
小松和彦こまつかずひこの見解
この妖怪について具体的に言及した記述は確認できていない
現代文化
縁切りの神としても知られ、婚礼こんれいの際に橋を迂回する風習が一部で語られる
伝承の現況
宇治橋西詰の橋姫神社に今も祀られている