広島・三次に伝わる山本五郎左衛門は、少年・稲生平太郎を三十日間試した末、正体を現して友情の証を残したという妖怪たちの総大将。実録に基づく怪異譚として、他の伝説的妖怪より史料的信頼性が高いとされている。恐怖に屈せず一ヶ月を耐え抜いたこと自体が対処だった、というこの話の構造は、今読んでもよくできていると思う。三次市には稲生物怪録いのうもののけろくミュージアムがあり、京極夏彦など現代作家の作品でも繰り返し取り上げられている。