威圧喰は、人を詰める場所に居着く。会議室の一番奥の席、個室に呼び出す面談、深夜のオフィス。そこに立った者に、理不尽な言葉で相手を追い詰めさせ、心を完膚なきまでに打ち砕かせる。誰かを責め、無理を押しつけ、逃げ場のないところまで追い込むほど、身体には力が満ち、顔色まで良くなっていくという奇妙な性質を持つ。相手から奪った「気」を食べているためだといわれる。
誰かを言い負かせば自信がつき、誰かを黙らせれば自分が偉くなったように感じる。だが、この妖怪には大きな弱点がある。人を打ち負かすたびに、周囲から少しずつ「尊敬」を失っていくのだ。
威圧喰の姿を見ると、人々は口を閉ざし、必要以上に近寄らなくなる。表面上は従っていても、誰も本心では頼ろうとはしない。それが、本人には見えない。人を打ち負かすたびに元気になっているので、「最近、みんな自分を認めている」と勘違いし、ますます威圧する。人から尊敬されなくなるほど元気になり、元気になるほど尊敬されなくなるという循環の中で生きている。
最終的には、誰も逆らわなくなったのではなく、誰も本気で関わらなくなっただけなのだという。
人から気を奪って元気になり、奪うほど尊敬を失う。力を持った者が最も憑かれやすく、憑かれている間は自分が慕われていると錯覚する。一体になれば、周囲から人が消えたことにさえ気づけなくなる。
小物の妖怪は、悪戯好きだと思って可愛がりながら、うまく付き合えばいい。だが大妖怪は違う。絶対に一体になってはならない。