たむろーは、脱衣所とロッカーの並びに棲む妖怪である。この妖怪の性質はただ一つ、取り憑いた者の占める面積を、少しずつ広げていくことである。
まず、ロッカーの扉を開けたまま、その前で動かなくさせる。着替えているだけなので本人には悪気がないが、後ろから見れば通路を塞いだ石像と変わらない。次に、荷物を広げさせる。鞄、サウナハット、タオル、水筒が、ベンチや洗面台の上に順に並んでいく。扉を開ける手の力も少し強くなり、隣の人の肘に当たる。当てたことには気づかない。
連れがいれば、話が始まる。着替えが終わっても動かず、輪は広がり、通路の真ん中まで占めていく。鏡の前に立てば、そこから動かなくなる。鍵を置いた場所を忘れさせ、同じ列を何度も往復させることもある。
どれも一つずつなら大したことではない。だが、たむろーはそれを全部、同じ人の周りで同時に起こす。恐ろしいのは、この妖怪が狭い場所ほど力を増すことである。混み合った脱衣所でこそ、最も大きく膨らむ。
一度、自分の足元から半径一メートルを見渡す。そこに広がっているものを畳めば、たむろーは縮んでいく。