椅子喰いは、外気浴の椅子を喰う妖怪である。喰うといっても椅子そのものが消えるわけではなく、そこに座る者の時間を喰って、椅子を使えない状態のまま長く占めさせる。取り憑かれた者は、整った気持ちよさを長引かせようとして、立ち上がるきっかけを見失う。本人はまだ整っているつもりでいるが、体はもう冷えきっている。
その間、後ろで椅子が空くのを待っている人が、何人も通り過ぎていく。
この妖怪は、気持ちよさそのものを奪わない。ただ、その終わりどきを分からなくさせる。一度、目を開けて周りを見る。それだけで、椅子喰いは口を離す。