PRODUCTION STORIES
違う声のまま、ひとつの集団になる
八つのヴァースを並べた最初の名刺と、個人の名前を外へ送り出す契約。Wu-Tang Clanを、声と活動の組み立てから読む。
九人を同じ声に揃えるのではなく、それぞれの違いを集団の輪郭にする。Wu-Tang Clanの入口を、誰が何曲ラップしたかという数字だけでなく、声をどう並べ、個人の活動をどう外へ広げたかという二つの問いから考えたい。
最初の名刺は、八つのヴァースだった
2013年のNPRの取材は、Protect Ya Neckを、八つのヴァースを並べ、コーラスを置かない曲として紹介している。九人の集団の入口を、一つの均一な声ではなく、声の交代から考えることができる。
声の交代そのものを道案内にする、という聴き方ができる。全員の名前を先に覚えてから聴く必要はない。まず一人が終わり、別の声が入る瞬間を追うと、集団の大きさが曲の展開として見えてくる。
出典:NPR / KPBS — The Wu-Tang Clan’s 20-Year Plan (2013-04-08)
集団の契約に、個人が出ていく余地を残す
同じ取材でRZAは、グループはLoudと契約しながら、メンバーは個別に別のレーベルへ進める構想を振り返っている。一つの会社に全員を閉じ込めるのではなく、個人の仕事が別々の場所へ届く仕組みを作る。その考え方は、作品の外側にも集団の形を広げていた。
Method Manは、その個人名がグループの曲名にもなる入口だ。一方、C.R.E.A.M.では語りとフックの役割に注目できる。個人を際立たせることと、集団として曲を成立させることは、どちらか一方だけを選ぶ話ではない。
出典:NPR / KPBS — The Wu-Tang Clan’s 20-Year Plan (2013-04-08)
録音として残された、音と言葉と仕組み
個人の活動へ枝分かれしたあとの影響まで、録音の評価につながっている。『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の2022年National Recording Registry登録を伝える米国議会図書館の発表は、別のレーベルへ広がった関連作品が、その後数十年にわたりグループの影響を深めたことにも触れている。
1993年の曲から1997年のBells of War、さらにSoul Power (Black Jungle)へ進み、同じグループの別の時期を比較してみたい。このページの選曲は掲載済み作品だけをまとめたもので、全作品目録や代表曲の網羅ではない。各記事に掲げた出典も確かめながら、違う声が一緒にいる意味を考えたい。
出典:Library of Congress — National Recording Registry 2022 announcement
歴史と契約の経緯は公開された取材・公式資料に基づきます。比較の順番と聴き方は本稿の編集上の提案で、DJ Naoyaman本人の体験談ではありません。

