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歌劇「魔笛」より 夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように我が胸に燃え」
復讐に燃える夜の女王が娘にナイフを握らせる、『魔笛』第2幕の怒りのアリアです。高音のスタッカートと変ロ音の叫びが、ソプラノの技巧の頂点として知られています。
作曲の経緯
『魔笛』の台本はエマヌエル・シカネーダーが書き、彼の劇団が1791年9月30日にウィーンのヴィーデン劇場で初演しました(シカネーダー自身がパパゲーノ役)。夜の女王が第2幕で歌うこのアリアでは、女王が娘パミーナにナイフを握らせ、宿敵ザラストロを殺すよう迫ります。従わなければ母娘の縁を切り、呪うと宣言する激しい場面です。初演で歌ったのは、モーツァルトの義妹ヨゼファ・ホーファーです(当時32歳)。非常に高い声域と敏捷な技巧に恵まれた歌手で、モーツァルトは彼女の力量を知ったうえで2つの大アリアを書いたとされます。曲の音域は2オクターブ(F4からF6)で、高い音域が続きます。シカネーダーの詩はこのアリアで例外的に長めの韻律(5脚)を用います。
出版・初演
1791年9月30日、ウィーンのヴィーデン劇場で歌劇『魔笛』が初演されました(モーツァルト自身が指揮したとIMSLP検索結果に記載されています)。出版は1793年・1814年のジムロック社です(IMSLP記載)。
題名・通称の由来
歌い出しの「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」(地獄の復讐が私の胸に煮えたぎる)にちなむ通称です。夜の女王には前半に別のアリア「おののくな、わが息子よ」があるため、こちらは「夜の女王の第2のアリア」とも呼ばれます。
構成分析
- 怒りの導入 短調の力強い管弦楽とともに、女王が復讐の怒りを歌い始めます。
- コロラトゥーラの技巧 高音のスタッカートを含む華やかな上行・下行パッセージ(最高音F6)が続きます。
- 最後の呪い 「ヒョルト(聞け)」が3回繰り返され、ニ、ヘと来て予想された(イ)ではなく変ロ音に達します。ナポリの和音を伴い、アリアの頂点となります。
音楽的特徴
ある研究者は、頂点の「聞け」でニ・ヘと上がった後に、予想されるイ音(主和音の完成)ではなく変ロ音へ進むモーツァルトの「名人芸」を称賛しています。管弦楽には全ヴァイオリンがG線の高音域をユニゾンで弾く瞬間があります。
演奏のポイント
怒りの感情と技巧を両立できるかがすべてです。高音スタッカートの正確さ、そして「聞け」の変ロ音に宿る恐ろしさに注目したいです。MusicWebのレビューは、モーザーの演奏を、女王の悪役としての迫力と正確な高音を両立した例として評価しています。
この音源について(収録エピソード)
この全曲録音は1972年8月8〜16日にミュンヘンのビュルガーブロイで行われ、ザヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団、夜の女王にエッダ・モーザー、タミーノにペーター・シュライアー、ザラストロにクルト・モルらが参加しました。会話を含めドイツ語話者のキャストをそろえた点が長所とされ、英国の評者はモーザーの夜の女王を「非常に劇的で傑出している」と評しました。この録音からの「地獄の復讐は」(1972年8月ミュンヘン録音)は、NASAのボイジャー探査機に積まれたゴールデンレコードにも収録されています。
音源の投稿元(Wolfgang Sawallisch - Topic)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- エッダ・モーザー(ソプラノ)、ヴォルフガング・ザヴァリッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1972年8月)
ミュンヘンのビュルガーブロイで録音されました。NASAのボイジャー探査機のゴールデンレコードに収録された音源です。 - ジューン・アンダーソン((映画『アマデウス』))
映画『アマデウス』でこのアリアを歌います(Wikipedia)。
映画・ドラマ・アニメ
- アマデウス(1984年)
ジューン・アンダーソンがこのアリアを歌います(Wikipedia英語版・シカゴ交響楽団ページ参照)。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- モーツァルト:おののくな、わが息子よ(夜の女王の第1アリア)
- モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
- モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」より「あらゆる苦しみが」
同じ作曲者の曲
ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331 第1楽章(主題と6つの変奏) / ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッシオーネ / アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525 第1楽章 / 歌劇「フィガロの結婚」より 手紙の二重唱(そよ風によせて) / アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618
トリビア
- エッダ・モーザーが歌ったこのアリアの録音は、NASAのボイジャー1号・2号に積まれたゴールデンレコードに収められています。
- 1840年のザイフリートの手紙によれば、死の前夜(1791年12月4日)のモーツァルトは、いま義妹ホーファーが高いFを歌っているところだ、と妻に囁いたといいます。
- 自分の歌唱力を過信した「史上最悪の歌手」フローレンス・フォスター・ジェンキンスの愛唱曲でもありました。