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ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331 第1楽章(主題と6つの変奏)
ソナタの幕開けに変奏曲を置いたモーツァルトの異色作です。ゆれるシチリアーナ風の主題が6通りに姿を変え、第3楽章のトルコ行進曲へ続きます。同じ主題が次はどんな姿を見せるのでしょうか。6つの変奏には、そんな発見があります。
作曲の経緯
長らく1778年のパリ滞在中の作とされてきたが、近年の研究で1783年ごろのウィーン時代の作と見られています。1784年にウィーンのアルタリア社から、第10番K.330・第12番K.332とともに出版されました。ソナタ形式の楽章を持たず、冒頭に変奏曲、次にメヌエット、最後にトルコ風のロンドを置く異例の並びで、全楽章がイ長調かイ短調で統一されています。2014年にはブダペストの国立セーチェーニ図書館で第1・第2楽章部分にあたる自筆譜4ページが見つかり、同年コチシュが初演奏しました。1783年はウィーンがトルコ軍の包囲を退けて100年の節目にあたり、終楽章のトルコ趣味にはその世相が映るとする見方もあります。
出版・初演
1784年、アルタリア社です(ウィーン)。K.330、K.332と同時に出版されました。
題名・通称の由来
通称「トルコ行進曲付き」は第3楽章にモーツァルト自身が付けた「Alla turca(トルコ風に)」の指示に由来します。トルコ軍楽隊(イェニチェリ)の響きを模したもので、第1楽章自体に愛称はありません。
構成分析
- 主題(Andante grazioso) 8小節+10小節それぞれにリピートが付く2部構成です。この枠組みが全変奏で保たれます。
- 第1・第2変奏 上声の装飾、続いて3連16分音符の伴奏上での旋律装飾です。
- 第3変奏 イ短調に転じ、音階的な装飾が続きます。第3楽章の動機との近さも指摘されます。
- 第4・第5変奏 第4は手の交差を伴う華やかな変奏です。第5は初めてAdagioに落とし、細かな装飾を加えます。
- 第6変奏 4/4拍子のAllegroに変わり、終結部の役割を果たします。
音楽的特徴
ソナタの冒頭楽章に変奏曲を置いたため、典型的な急速なソナタ形式の幕開けを避けた作品となりました。主題はゆれるシチリアーナ風の6/8で、変奏が進んでも8小節+10小節の形は変わらず、短調への転換、手の交差、遅いテンポの変奏、速い終結変奏と、表情だけが次々に変わります。第3楽章のトルコ行進曲の人気に隠れがちですが、全体の入口として穏やかな性格を担います。
演奏のポイント
主題はなだらかな拍の揺れを保ち、装飾音は旋律の流れを壊さないよう軽く弾きます。第3変奏の短調は音色を変えて陰影をつけ、第5変奏のAdagioは歌い込み、第6変奏で一気にテンポを上げるテンポ対比を明確にします。繰り返しでは装飾を加えるかどうかも考えどころです。
この音源について(収録エピソード)
内田光子が1980年代にロンドンのヘンリー・ウッド・ホールで録音したモーツァルトのピアノ・ソナタを5枚にまとめたセットで、ソナタ全曲と幻想曲ハ短調K.475を収めます。MusicWebの評者は、軽やかさと繊細さ、人工的な残響のない自然なピアノの音を称賛し、押しつけがましくない演奏と述べています。K.331とK.332のみを収めた単独盤も別に存在します。
音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。このトラックが上記セットのものかは、演奏者からの推定です。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
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映画・ドラマ・アニメ
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CM
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教科書・鑑賞教材
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関連作品
- ピアノ・ソナタ第11番 第3楽章(トルコ行進曲)
- ピアノ・ソナタ第10番 K.330
- ピアノ・ソナタ第12番 K.332
- レーガー《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》
- ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第12番 Op.26(変奏曲で始まる点の先例とされる)
同じ作曲者の曲
ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッシオーネ / アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525 第1楽章 / 歌劇「魔笛」より 夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように我が胸に燃え」 / 歌劇「フィガロの結婚」より 手紙の二重唱(そよ風によせて) / アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618
トリビア
- 第1楽章の主題は、マックス・レーガーが1914年の管弦楽曲《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》に用いました。
- ブルーベックの《ブルー・ロンド・ア・ラ・トルク》(1959)は、この終楽章を元にした曲ではないとされます。
- 第5変奏の最後の3音のリズムは、自筆譜と一般の版で異なる箇所があります。