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アヴェ・マリア(エレンの歌 第3番)
スコットの詩に付けられた祈りの歌を、リストがピアノ一台で歌わせた編曲です。息の長い旋律が夜に寄り添います。
作曲の経緯
1825年、シューベルトはウォルター・スコットの叙事詩『湖上の美人』のドイツ語訳から7曲を作曲し、その第6曲がこの歌です。作品52として1826年に出版されました。ヒロインのエレンが聖母に庇護を祈る場面の歌で、各連の始めと終わりに現れる「Ave Maria」という呼びかけが通称の由来になりました。のちにこの旋律へラテン語の祈祷文を当てて歌う習慣が広まったが、シューベルトが典礼文に曲を付けたわけではありません。ピアノ独奏版はリストが1837〜38年に作った『シューベルトの12の歌曲』S.558の第12曲(1876年改訂)で、旋律を中音域に置き、上下の和音で包み込みます。
出版・初演
原曲は1826年に出版されました(作品52)。リスト編曲は『12 Lieder von Franz Schubert』S.558に収録されています(1838年刊とする資料あり)。
題名・通称の由来
歌詞冒頭と各連末の呼びかけ「Ave Maria」からです。『湖上の美人』ゆえ、初演先の伯爵夫人自身も「湖上の美人」と呼ばれたとされます。
構成分析
- 第1連 穏やかな分散和音に乗り、祈りの旋律が始まります。
- 第2〜3連 同じ旋律を保ちつつ、詩の内容に応じて表情が変わります。
- リスト版の中間部 和音の伴奏が分散和音に替わり、高音域で静かに輝きます。
- リスト版の頂点と結び 感情が最も高まったのち、再び静けさに戻ります。
音楽的特徴
原曲は変ロ長調で、持続低音と六連符の伴奏に息の長い旋律が乗る簡素な歌です。リストの独奏版は原曲の構成にほぼ忠実で、旋律を中音域に置き、上下の音域を和音や分散和音で囲むため、三本の手で弾くような響きになります。派手な技巧曲ではないが、多層の音色と分散和音の処理に、高度な技術と音楽性が求められます。
演奏のポイント
旋律を中音域でレガート・カンタービレに歌わせ、伴奏の分散和音は音量を抑えて旋律の下に溶かします。ペダルは濁らないよう細かく踏み替え、頂点でも音を割らず、結びは息を整えて静かに閉じます。
この音源について(収録エピソード)
グロスヴェナーのアルバム『Liszt』は2021年2月19日に発売された、Deccaでの6枚目のアルバムです。「アヴェ・マリア」(S.558)は10曲目に置かれ、収録時間は5分28秒です。リストによるシューベルト歌曲の有名な編曲を、アルバムを締めくくるアンコール的な小品として選んでいます。録音場所・日付・制作陣は確認できませんでした。
音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- マルク=アンドレ・アムラン(年未確認)
リスト編曲版(S.558/12)の演奏がYouTubeで確認できます。 - ヴァレリー・トライオン(年未確認)
ナクソスのリスト・ピアノ作品全集第17巻収録とされます。 - レスリー・ハワード(年未確認)
初稿版の初録音と紹介されています。
映画・ドラマ・アニメ
- ファンタジア(1940)
「禿山の一夜」に続く終結部です。ストコフスキー編曲の声楽・弦楽版です(ピアノ版ではありません)。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
トリビア
- シューマンは「ミルテの花」第1曲「献呈」の後奏で、この旋律を引用しています。
- 映画『ファンタジア』は、ムソルグスキー「禿山の一夜」の終わりにこの曲を続け、鐘の音が夜明けではなく礼拝の始まりに聞こえるようにしました。
- IMSLPの作品ページには、リスト版の演奏録音が登録されています。