SUBURBIA CLASSICA › Songs › ピアノ独奏
愛の夢 第3番
歌曲を原曲とする、豊かな旋律と広い音域の伴奏の組み合わせです。2つのカデンツァが3つの部分を分けます。
作曲の経緯
『愛の夢』は、もとは別々に書かれた3つの歌曲を、リスト自身がピアノ独奏用に改作したものです。第1番は『高貴な愛』S.307、第2番は『私は死んだ』S.308です(どちらもウーラント詩、1849年作曲)。第3番の原曲は、フライリヒラートが1829年に書いた詩『おお、愛しうる限り愛せ』に付けた歌曲S.298です。英語版Wikipediaによれば、リストは詩の最初の4節を1843年に曲にしました。成立年は資料により1843年・1845年・1847年と揺れがあり、確定できていません。1850年、3曲は『3つの夜想曲』という副題のもとに、高声用の歌曲集と2手ピアノ版が同時に出版されました。ウーラントの2編が聖なる愛と官能の愛を、フライリヒラートの詩が成熟した無条件の愛を描くという3曲組の構想が、この改作で示されました。ショパンの夜想曲に触発されたとする解説もありますが、一次的裏付けは未確認です。
出版・初演
1850年にピアノ独奏版と高声歌曲版が同時に出版されました(IMSLPの出版社表記はKistner)。原曲の歌曲S.298は初版1847年とする記述もあり、年代に揺れがあります。初演は未確認です。
題名・通称の由来
Liebesträumeはドイツ語で「愛の夢」です(複数形)。リスト自身は各曲を「Notturno(夜想曲)」と呼びました。3曲は愛の3つの形(高貴な愛、官能的な愛、無条件の成熟した愛)を描きます。第3番の原詩の題『O lieb, so lang du lieben kannst』は「愛しうる限り愛せ」の意です。
構成分析
- 第1部(A-A'-B) 変イ長調で、長く保たれる旋律の周りを分散和音が囲みます。単純な主旋律が6小節で提示され、2回目は動きが増します。続く部分はpoco crescendo ed agitatoで緊張を高めます。
- 第1カデンツァ 上行して下行する速い走句で、夢への移行を表すと解説されます。
- 第2部(クライマックス) 主旋律がロ長調に現れ、次いでハ長調へと進み、最後に変イ長調へ戻ります。右手のオクターヴと分散和音で頂点に達します。
- 第2カデンツァ 鍵盤の高音域から下降して緊張が解け、夢から現実へ戻る場面とされます。
- 終結部(再現とコーダ) 変イ長調で主旋律が回帰します。dolceで、哀愁を帯びて静かに消えてゆきます。演奏時間は約4分50秒です。
音楽的特徴
変イ長調、4つのフラットです。1つの旋律が全曲を通して変奏されながら現れます。旋律は長音で保持され、逆向きの符尾の分散和音が周囲を流れるため、旋律を浮かび上がらせることが要となります。2つのカデンツァが3つの部分を分け、ロ長調やハ長調など遠隔調への転調が緊張を生みます。第1番と同じ調で、第2番(ホ長調)は変イ長調と増5度の関係にあり、3曲組全体の対比が際立ちます。
演奏のポイント
旋律を内声や分散和音から浮かび上がらせるタッチの分離が最大の課題です。カデンツァは高度な運指と技術を要します。
この音源について(収録エピソード)
2011年のリスト生誕200年にあわせたアルバムです。ソロ曲は同年4月にベルリンのテルデックス・スタジオで録音され、ピアノ協奏曲第1番はゲルギエフ指揮ウィーン・フィルと6月にウィーン楽友協会で収録されました。発売は8月19日です。「愛の夢第3番」はソロ曲の一つです。タイトルの「ピアノの英雄」は、ランランが幼少期からリストを憧れの存在としてきたことを表します。
音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ジョルジュ・シフラ(1957および1977)
EMI。華麗なヴィルトゥオジティと即興的な語り口です。アルバム名は未確認です。 - エフゲニー・キーシン(録音年未確認)
Revelationです(RV 10031)。若き日の端正で伸びやかな演奏です。
映画・ドラマ・アニメ
確認できた出典はありません。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- 歌曲『高貴な愛』S.307(ウーラント詩)
- 歌曲『私は死んだ(幸福な死)』S.308(ウーラント詩)
- 歌曲『おお、愛しうる限り愛せ』S.298(フライリヒラート詩)
- 愛の夢 S.541 の編曲(ギター、オーケストラ、ヴァイオリンなど多数がIMSLPに登録)
トリビア
- 同じ1850年に、歌曲版と独奏版の2種類が同時に出版されました。
- 第1番と第3番は同じ変イ長調ですが、第2番はホ長調で増5度離れており、この不安定な関係は意図的と解釈されます。
- 原詩『O lieb, so lang du lieben kannst』は1829年の作で、墓前で悔やむ人を描きます。曲はこの詩の反復句を旋律の核としています。