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トロイメライ(子供の情景 第7曲)
「夢想」を意味する題名どおり、ゆるやかに上り下りする4小節の旋律が、和声を変えながら8回現れる短い曲です。
作曲の経緯
1838年2月から3月にかけて、シューマンは短い小品を30曲ほど一気に書き進めました。日記によればトロイメライは2月24日に生まれています。3月中旬にはクララ宛の手紙で、彼女が「あなたは時々子供のようね」と言ったことが刺激になり、30ほどの「小さくて滑稽な曲」ができたと伝えています。そこから13曲を選んで『子供の情景』としました(日本語版Wikipediaは12曲と記す)。当時クララとは、彼女の父ヴィークの猛反対で結婚の見通しが立たない時期にありました。題名は完成後に添えられた「演奏のための繊細なヒント」にすぎず、元の題は『やさしい小品』や『子供の物語』でした。子供のために書かれたのではなく、大人が子供時代を回想するための作品という点を作曲者自身が語っています。選に漏れた曲は後に作品99と124に回されました。曲そのものがクララへの献呈や直接の描写だと断言できる一次資料は、確認できていません。
出版・初演
出版は1839年です(日本語版Wikipediaは「1839年2月、ライプツィヒのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社」と記すが、本文中に「翌年2月」とも書かれ、記述に揺れがあります)。初演は未確認です。完全な自筆譜は現存が知られていません。
題名・通称の由来
Träumereiはドイツ語で「夢想・白日夢」です。曲集の各題は作曲後に付けられたもので、シューマンは「演奏と解釈への繊細なヒントにすぎない」と述べました。原題は『Leichte Stücke(やさしい小品)』、さらに『Kindergeschichten(子供の物語)』という案もありました。
構成分析
- 全体の枠組み ヘ長調、4/4拍子、約2分半です。『子供の情景』第7曲で、前曲の活気から一転して静かな夢想的世界に入ります。
- 主要素材 4小節の旋律が上昇・下降を描き、それが8回現れるが、そのたびに和声づけが変わります。中声部の動きが幻想的な響きを作ります。
- 拍節感 1拍目に強いアクセントを置かず、4拍子の拍節を意図的にぼかして浮遊感を出しています。
- 小節ごとの形式区分 A-B-A'といった区分は、参照した出典では確認できませんでした(未確認)。
音楽的特徴
旋律は4度跳躍(ハ音からヘ音)で始まり、同じ4小節の旋律が繰り返されるたびに和声が塗り替えられます。中声部で複雑な和声進行を作り、幻想的な響きを得るのはシューマンの常套手段で、本曲が最も効果をあげた例とされます。拍頭の強調を避けて拍節を曖昧にし、夢のような質感を出しています。第8曲「暖炉のそばで」も同じ4度跳躍で始まり、動機の共通性が指摘されます。
演奏のポイント
技術的難所は少ないが、8回の旋律反復をどう描き分けるかが、演奏者の力量の見せどころです。旋律線を歌わせつつ内声を濁らせずに動かし、拍節をぼかしても流れを失わない工夫が要ります。
この音源について(収録エピソード)
小品を集めた構成のプログラムを、スタインウェイのグランドピアノと、弦にフェルトを挟んだアップライトの二通りで弾く2枚組のコンセプト・アルバムです。着想の一つは、オラフソンが若い頃に弾いたアップライトの記憶だといいます。「トロイメライ」を含む全曲をフェルト入りのアップライトでも再録音しており、評者はこの曲がその音で特に心に響くと書いています。この動画はグランドピアノ版です。
音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ウラディーミル・ホロヴィッツ(1960年代中頃(スタジオ)、1987年(ウィーン))
感傷に流れず客観的な解釈で知られ、アンコールでも名高いです。レーベルは未確認です。 - マルタ・アルゲリッチ(1984(1983とする資料もあり))
Deutsche Grammophon『子供の情景』『クライスレリアーナ』です。自在なテンポ感と集中力で評価されます。 - イェルク・デームス(1979)
SKC。コンラート・グラーフ(約1835)のピアノを使用しています。ピリオド楽器による素朴で小さな響きです。 - アンドレアス・シュタイアー(2007)
Harmonia Mundi。エラール(1837)を使用しています。作曲当時に近い楽器の音色を味わえます。
映画・ドラマ・アニメ
- Song of Love(1947)
映画の冒頭と終わりの音楽主題として使われています(キャサリン・ヘプバーンが演奏)。邦題は未確認です。 - Träumerei(トロイメライ)(1944)
シューマン夫妻を描いたドイツの伝記映画で、題名に曲名を採用しています。劇中での使われ方は未確認です。 - 転校生(公開年未確認)
オープニングとエンディングのモノクロ場面で、オーケストラ編曲版(編曲:八田耕治、朝比奈隆指揮・大阪フィル)を使用しています。 - かがみの孤城(アニメ映画)(公開年未確認)
孤城の暖炉の間にある大型ディスクオルゴールの曲として使われています。
CM
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- 『子供の情景』Op.15(全13曲)
- 『色とりどりの小品』Op.99、『アルバムの綴り』Op.124(選に漏れた曲の一部を収録)
- 『子供のためのアルバム』Op.68
- 『ノヴェレッテ』Op.21(当初は『子供の情景』とセットでの出版を構想)
トリビア
- 30曲ほど書かれた中から13曲だけが選ばれ、残りは後に作品99と124として世に出ました。
- リストはこの曲集に感激し、「生涯最大の喜び」と手紙に書き、娘のために週に2、3回は弾いていると伝えました。
- ロシアでは、この曲のハミング合唱版が戦勝記念日の黙祷の時間に流される追悼音楽として知られます。