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ジムノペディ 第1番
左手の2つの和音の往復の上に、装飾を排した旋律が静かに乗ります。速度表示は「ゆっくりと、苦しみをもって」です。装飾の少なさが、和音の色を味わう余白をくれます。
作曲の経緯
サティは1888年3月から4月にかけて、3曲のピアノ曲「ジムノペディ」を書き上げました。題名は古代スパルタで夏に行われた若者の踊りの祭り「ギュムノパイディア」に由来するが、典拠には諸説あります。サティ本人と友人ロラン=マニュエルはフローベールの小説『サランボー』を挙げました。一方、詩人J.P.コンタミーヌ・ド・ラトゥールの詩『古代人たち』を源とする見方もあります。第1番は1888年の夏、雑誌『家庭の音楽』にこの詩の一節とともに載りました。ただし、詩と曲のどちらが先に書かれたかは分かっていません。第1番の献呈先は、1895年の版に記されたジャンヌ・ド・ブレ嬢で、1888年の自筆譜にはありません。1897年2月には友人ドビュッシーが第3番と第1番を管弦楽に編曲し、2年後の出版時に番号を入れ替えました。
出版・初演
1888年夏に雑誌『家庭の音楽』に第1番が掲載されています。1895年の版に献呈が付きます。IMSLPには1896年E.ボードゥー版を底本とするとの注記もあります。初演は未確認です。
題名・通称の由来
古代スパルタの祭り「ギュムノパイディア」のフランス語形です。gymnos(裸の・武器を持たない)が語源に含まれます。サティは『サランボー』から取ったと述べたが、詩人コンタミーヌ・ド・ラトゥールの詩に同じ語が出る点や、辞典の定義から得たとの説もあります。ピュヴィ・ド・シャヴァンヌの絵の影響を推す見方もあります。
構成分析
- 導入 3/4拍子、Lent et douloureuxです。左手の低音と和音の反復で、Gmaj7とDmaj7の2つの和音が交互に現れます。
- 主題部 その上に、装飾を排した静かな旋律が乗ります。旋律は伴奏と軽い不協和を作ります。
- 反復と変化、結び 主題が繰り返され、和声が少しずつ動いたのち、静かに終わります(確かめられたのは和声進行と速度表示までです。小節数や各部の長さは未確認です)。
音楽的特徴
3/4拍子の遅いテンポと、左手の「低音→和音」の反復が骨格をなします。冒頭は下属音上のGmaj7と主音上のDmaj7の交替で、長調とも短調ともつかない曖昧な色合いを出します。旋律は和声に対して穏やかな不協和を保ち、哀愁を生みます。装飾を排した簡素な書法は、サティのいう「新しい単純さ」の最初の例とヘンレ版は解説しています。後に環境音楽の先駆とも見なされます。
演奏のポイント
技術は平易ですが、左手の跳躍の中で低音と和音の音量差を整え、一定の歩みを保つのが要点です。右手は歌わせつつ、テンポを前に押さないことです。
この音源について(収録エピソード)
ロジェのサティ集は1983年5月にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音され、1984年にデッカから発売されました(410 220-2)。ジムノペディ全3曲に加え、グノシエンヌ、ジュ・トゥ・ヴ、官僚的なソナチネなどを収めます。クラシックFMはこの盤をジムノペディの優れた演奏に挙げ、録音の冷ややかな明晰さがサティの音楽に合うと評しています。
音源の投稿元(Topic/レーベル公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- アルド・チッコリーニ(1967〜1971)
仏EMI。サティ再評価のきっかけを作った録音です。 - パスカル・ロジェ(年未確認)
Deccaです(458 1052)。軽やかで、洗練された演奏と評されます。 - ジャン=イヴ・ティボーデ(年未確認)
サティのピアノ全集(CD5枚)に収録されています。軽いタッチで自然に流れるテンポです。レーベルは未確認です。
映画・ドラマ・アニメ
- 鬼火 (Le Feu follet)(1963)
全編を通じてジムノペディ1〜3番とグノシエンヌが断片的に流れます。演奏はクロード・エルフェルです。 - My Dinner with Andre(1981)
場面は未確認です。 - Another Woman(1988)
「マリオンのテーマ」として使われています。 - ロイヤル・テネンバウムズ(年未確認)
場面は未確認です。 - マン・オン・ワイヤー(年未確認)
場面は未確認です。 - 涼宮ハルヒの消失(2010)
ジムノペディ全3曲を使用しています。最後にもBGMとして流れます。
CM
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- ジムノペディ第2番・第3番
- ドビュッシー編曲の管弦楽版(第3番・第1番、発表時に番号が入れ替わる)
- グノシエンヌ
- ブラッド・スウェット&ティアーズ「Variations on a Theme by Erik Satie」(1968)
トリビア
- ドビュッシーは、第2番を編曲しなかった理由を「第2番まで編曲して聞かせるには少し退屈だから」と答えたと伝えられます(伝聞)。
- 日本では、1963年の映画『鬼火』でこの曲が広まったとされます。1975年には池袋の西武美術館が館内の環境音楽として使い、さらに知られるようになりました。
- ブラッド・スウェット&ティアーズが第1番と第2番を編曲した「Variations on a Theme by Erik Satie」は、1968年のアルバムに収録され、翌年のグラミー賞を受けました。