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月の光(ベルガマスク組曲 第3曲)
弱音の和音と流れるアルペッジョで、月明かりの情景を描いた小品です。ヴェルレーヌの詩に結びつく題名を持ちます。
作曲の経緯
ドビュッシーは1890年ごろ、20代後半でピアノ組曲を構想し、前奏曲・メヌエット・「感傷的な散歩」・パヴァーヌを並べました。のちに「感傷的な散歩」は「月の光」に、パヴァーヌは「パスピエ」に改題されました。どれもヴェルレーヌの詩に由来する題名です。組曲名の「ベルガマスク」は、詩集『艶なる宴』の詩「月の光」の冒頭にある「仮面とベルガモの踊り手」の語から取られました。ドビュッシーはこの同じ詩に歌曲も付けていますが、組曲の「月の光」はそれとは全く別の音楽です。ヘンレ版の解説によると、原稿は1890年に出版社ショードンへ渡ったまま刊行されず、1905年にフロモン社から出ました。ドビュッシーは校正刷に作曲年「1890」と書き入れ、初期作であることを明示しました。出版前に改訂したことは確かですが、1890年の形と1905年の形で何がどれだけ違うのかは、現存資料からは分かっていません。
出版・初演
1905年、パリのE.フロモン社です(プレート番号 E.1404 F.)。1890年ごろ作曲、1905年に改訂のうえ出版されました(IMSLP、ヘンレ、英語版Wikipediaで一致)。初演は未確認です。
題名・通称の由来
題名はヴェルレーヌ『艶なる宴』所収の詩「Clair de lune(月の光)」からです。この曲の旧題は「感傷的な散歩(Promenade sentimentale)」で、これもヴェルレーヌの詩の題です。組曲名「ベルガマスク」は同詩第1節の「masques et bergamasques」に由来します。
構成分析
- 冒頭主題(A) 変ニ長調・9/8拍子、Andante très expressifです。弱音で、柔らかい下降する旋律をゆるやかな和音で支えます。調性感は穏やかにぼかされます。
- 中間部(B) 律動が流れ出し、アルペッジョ状の伴奏の上で旋律が次第に高まります。曲中で最も感情の振れ幅が大きい部分です。
- 主題の再現(A')と結び 冒頭の主題が戻り、音量を落として静かに閉じます。全体は緩-やや動く-緩の三部形式的な構成です(小節番号までは未確認)。
音楽的特徴
変ニ長調、9/8拍子の複合3拍子で、全体の大半が弱音で奏されます。和声は古典的な機能和声の連なりから距離を取り、旋法的で曖昧な響きを生みます。前奏曲の部分には、同じヴェルレーヌ詩にフォーレが付けた歌曲の伴奏に似た音形が出るとの指摘もあり、先行作曲家の影響が見える初期作でもあります。ピアノ書法は、内省と距離感の間を行き来する印象主義的な響きの扱いが核になります(細かな和声分析は、参照した解説では詳述されていません)。
演奏のポイント
超絶技巧は少ないが、弱音の中で音色の層とペダルを制御し、9/8の揺らぎを自然に保つことが課題になります。
この音源について(収録エピソード)
2015年ショパン国際コンクールの優勝者チョ・ソンジンが、ドビュッシー没後100年の前年にあたる2017年に録音したオール・ドビュッシー・プログラムです。ベルリンのジーメンス・ヴィラで録音され、同年11月17日にドイツ・グラモフォンから発売されました。「月の光」を含む「ベルガマスク組曲」のほか、「映像」第1集や「子供の領分」などを収め、「喜びの島」で締めくくります。チョは11歳の初リサイタルで「ゴリウォーグのケークウォーク」を弾き、パリでミシェル・ベロフに師事しました。
音源の投稿元(DG公式)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ヴァルター・ギーゼキング(1951〜1955年)
EMI(現Warner Classics)『ベルガマスク組曲、アラベスク、ピアノのために、夢想』です。内省的で慈しむような「月の光」と評される、ドビュッシー録音の基準盤です。
映画・ドラマ・アニメ
- オーシャンズ11(2001)
管弦楽編曲版が映画の結びに使われます。 - セブン・イヤーズ・イン・チベット(1997)
ダライ・ラマがオルゴールを受け取る場面です。 - TOKYO SONATA(2009)
最後の場面で子どもがピアノで全曲を弾きます。 - つぐない (Atonement)(2007)
場面は未確認です。 - トワイライト〜初恋〜(2008)
場面は未確認です。
CM
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- ベルガマスク組曲の他曲(前奏曲、メヌエット、パスピエ)
- ドビュッシー歌曲「月の光」(ヴェルレーヌ詩)
- フォーレ歌曲「月の光」と劇音楽『マスクとベルガマスク』
- 管弦楽編曲:カプレ、ストコフスキー、カイエ
- 冨田勲によるシンセサイザー編曲
トリビア
- ディズニーは『ファンタジア』(1940)にこの曲を使ったサギの映像の場面を作る予定でしたが、上映時間の都合で外されました。その映像は1946年の『メイク・マイン・ミュージック』の別の場面に転用され、1992年に作業用プリントが見つかって復元されました。
- 1971年にNHK『みんなのうた』で、この曲に中山知子の詞をつけた「月の光」が放送されました(歌は芹洋子と東京トルベール)。
- 2013年にGoogleが、この曲を使った音楽つきアニメーションのDoodleを公開しました。