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魔王
ゲーテの詩による物語歌曲です。夜道を駆ける父子と魔王を、一人の歌手と疾走するピアノの三連符で描く、18歳シューベルトの出世作です。
作曲の経緯
1815年、18歳のシューベルトがゲーテの同名バラードに付けた歌曲です。友人シュパウンの証言では、ある日の午後の数時間で書き上げられたといいます。作曲者は計4回書き直し、第4稿を1821年に作品1として出版しました。語り手・父・息子・魔王の4役を一人の歌手が歌い分け、ピアノは馬の疾走を思わせる三連符をほぼ最後まで刻み続けます。1820年12月1日にウィーンの私的な集まりで演奏された後、1821年3月7日にケルントナートーア劇場でヴォーグル(バリトン)とヒュッテンブレンナー(ピアノ)により公開初演され、大成功を収めて若い作曲家の名を広めました。ゲーテ本人は通作形式を好まず、送られた楽譜に返事をしなかったが、1830年にシュレーダー=デフリエントの歌を聴いて印象を改めたと伝えられます。
出版・初演
私的初演1820年12月1日(ウィーン)/公開初演1821年3月7日 ケルントナートーア劇場(J.M.ヴォーグル、A.ヒュッテンブレンナー)/1821年ディアベッリ社から作品1として出版されました。
題名・通称の由来
ゲーテのバラード『Erlkönig』(魔王=Erlking、子どもを連れ去る超自然的存在)の題をそのまま用いたものです。語源の詳細は今回の資料では未確認です。
構成分析
- 序奏(1〜15小節) ト短調です。右手の三連符の連打で疾走する馬を描き、左手が不吉な上行音階と下行アルペジョの動機を示します。
- 語り手・父と子(〜57小節) ト短調から変ロ長調へ進みます。語り手は中音域、父は低音域、子は高音域で歌われます。
- 魔王の誘い(58〜72小節ほか) 変ロ長調の甘く媚びる旋律です。伴奏の三連符は残るが音型が変わり、第2・第3の誘いでは調が上がっていきます。
- 子の三度の叫び 『お父さん』の呼びかけが半音ずつ上がって繰り返され、間隔も次第に詰まります。
- 終結(132小節〜) ト短調に戻り、三連符が止まって無伴奏のレチタティーヴォで子の死が語られます。
音楽的特徴
一人の歌手が4役(語り手・父・息子・魔王)を音域・調性・リズムで描き分けます。魔王の旋律だけが長調で、伴奏の低音三連符から一時的に解放されます。半音上行の音型が悪魔的な力を象徴し、子の叫びは毎回半音ずつ高くなります。歌手にも伴奏者にも高い技巧が求められる難曲として知られています。
演奏のポイント
冒頭の連打の緊迫感、魔王の猫なで声と父の低い声の対比に耳を向けたいです。三度目の子の叫び(フォルティッシモ)、そして三連符が止まって語られる最後の一節の静けさまで聴き届けたいです。
この音源について(収録エピソード)
DGによるフィッシャー=ディースカウとムーアのシューベルト歌曲録音は、ベルリンのUFA-Tonスタジオで1966年12月から行われました。IDAGIOは『魔王』の収録を1968年2月、同スタジオと記しています。Discogsによれば『Goethe-Lieder』所収のムーア参加分(魔王を含む)は1970年にDG 2720 006として発売され、魔王の演奏時間は4分19秒です。プロデューサーはライナー・ブロックです。なお、このYouTube ID(Topic配信)が上記セッションの音源であることは、メタデータ上では確認できていません。
音源の投稿元(Dietrich Fischer-Dieskau - Topic)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)/ジェラルド・ムーア(Pf)(1951(EMI))
MusicWebの批評は、後年の再録にはない自発性があると評しています。 - フィッシャー=ディースカウ/ムーア(1966-68(DG))
ベルリンUFA-Tonスタジオでの録音です。IDAGIOは本曲の収録を1968年2月と記載しています。演奏時間は4分19秒です(Discogs)。 - シューベルト作曲/リスト編(ピアノ独奏)(1838(改訂1876))
S.558の12の歌曲の一つです。声部ごとに音域を移して弾き分ける編曲です。 - ベルリオーズ、リスト、レーガーによる声と管弦楽版(1860 / 1860 / 1914)
いずれも声とオーケストラのための編曲です(Wikipedia記載)。
映画・ドラマ・アニメ
確認できた出典はありません。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- シューベルト《野ばら》D.257
- シューベルト《糸を紡ぐグレートヒェン》
- ゲーテ作詞によるレーヴェ作曲《魔王》
- エルンスト《魔王による大奇想曲》作品26(ヴァイオリン独奏)
- リスト《シューベルトの12の歌曲》S.558
同じ作曲者の曲
トリビア
- 作曲は数時間の出来事だったとシュパウンが伝えています(Wikipedia引用の伝聞)。
- ゲーテは当初、楽譜を受け取っても無言で送り返したとされます。
- リストはこの編曲を1840〜45年のドイツ演奏旅行で65回演奏しました(Wikipedia記載)。