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カッチーニのアヴェ・マリア
ソ連のリュート奏者ヴァヴィロフが1970年頃に書いたアリアで、のちにカッチーニ作として世界に広まった偽作です。ヴォカリーズ的な長い旋律で、今も多くの歌手が歌います。編曲を替えると、この長い歌のまた違った表情に出会えます。
作曲の経緯
この曲は、ソ連のギタリスト兼リュート奏者で作曲も学んだウラディーミル・ヴァヴィロフが1970年ごろに書いたアリアです。ヴァヴィロフはレニングラードの音楽学校で学び、国立楽譜出版社の校訂者も務めた人物で、自作をルネサンスやバロックの作曲家の名義で世に出すことが多くありました。この「アヴェ・マリア」も1970年にメロディア・レーベルのリュート音楽LPへ「作者不詳」として収められました。彼は1973年に亡くなり、その後に曲がジュリオ・カッチーニ作として流通し始めます。名義が替わった経緯は確定しておらず、共演したオルガン奏者マルク・シャヒンが付け替えたとする説も、シャヒンの没年が1970年とされるため時期が合わないと指摘されています。1987〜88年にオレグ・ヤンチェンコ編曲、イリーナ・アルヒーポワ歌唱の録音が出て注目され、ソ連崩壊後の1990年代にイネッサ・ガランテらの録音を通じて世界へ広まりました。現在はヴァヴィロフ作とみなされるが、慣用的にカッチーニの名で呼ばれ続けています。
出版・初演
1970年、メロディア盤『リュート音楽 16-17世紀』にヴァヴィロフ自身らの演奏で『作者不詳』名義で録音・発売されました。カッチーニ名義での流通は1970年代半ば以降です(1975年のボガチェワ盤で既にカッチーニ作と表記されています)。楽譜出版の初版は未確認です。
題名・通称の由来
「カッチーニの」という通称は、ヴァヴィロフ没後に付いた誤った帰属に由来します。歌詞は典礼で広く用いられる聖母への祈り「アヴェ・マリア」の冒頭部分です。
構成分析
- 概要 独唱とそれを支える伴奏からなる短いアリアです。版や編曲ごとに調・伴奏が異なり、楽曲内部の詳細な構成は一次資料で確認できていません。
- 編曲の系譜 オルガン版(ガランテ)、管弦楽編曲(ニック・イングマン、スティーヴン・マーキュリオ等)、器楽独奏版など多数の版があります。
音楽的特徴
和声が古い時代には存在しないもので、専門家が聴けば20世紀以降の音楽と判断できる、と日本の解説記事は述べます。また同種の曲なら3拍子が自然なのに4拍子で書かれている点も偽作とされる根拠として紹介されています。
演奏のポイント
同じ旋律でも、オルガン伴奏の簡素な版、オーケストラを伴う大編成版、チェロなどの器楽版で表情が大きく変わります。複数の編曲を聴き比べると、息の長い旋律の魅力がよく分かります。
この音源について(収録エピソード)
1999年11月発売のアルバム『サクレッド・アリア』に収録されました。伴奏はチョン・ミョンフン指揮のサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団です。アルバムは500万枚超を売り、ソロ歌手のクラシック盤として史上最大のセールスとされます。2000年にはクラシカルBRIT賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーなどを受けました。1999年にはローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会で撮影した映像作品も出ているが、音盤の録音会場や日付は確認できていません。
音源の投稿元(Andrea Bocelli - Topic)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ヴァヴィロフ、ナジェージダ・ヴァイネル(メロディア盤『リュート音楽』)(1970)
最初の収録です。作曲者名は『作者不詳』です。 - イリーナ・ボガチェワ(1975)
アルバム『古いアリア』です。カッチーニ作と表記されています。 - イリーナ・アルヒーポワ(オレグ・ヤンチェンコ編曲)(1987〜88)
広く知られるきっかけとなった録音です。 - イネッサ・ガランテ(1994〜95)
ソ連崩壊後に国際的な注目を集めたデビュー盤などです。 - シャルロット・チャーチ(1998)
アルバム『Voice of an Angel』です。 - アンドレア・ボチェッリ(1999)
アルバム『Sacred Arias』です。 - スミ・ジョー(2001)
アルバム『Prayers』です。 - ヘイリー・ウェステンラ(2005)
アルバム『Odyssey』です。
映画・ドラマ・アニメ
- ドニー・ダーコ(2001)
使用場面は未確認です(Wikipediaの使用作品一覧による)。 - 天国の階段(韓国ドラマ)(2003)
使用場面は未確認です(同上)。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- ヴァヴィロフ作とされる『黄金の都市』(フランチェスコ・ダ・ミラノ作として発表)
- クライスラーの『古典の巨匠風』偽作
- シューベルトのアヴェ・マリア
- グノーのアヴェ・マリア
トリビア
- ヴァヴィロフは自作を古い作曲家の名義で出す常習者で、「黄金の都市」の旋律も彼の作とされます。
- アルヒーポワ盤は1987年とも1988年とも記され、資料により年が分かれます。
- 日本語版Wikipediaはガランテの国際デビュー盤の収録で曲が注目されたと記し、ボチェッリやチャーチも歌ったとしています。