検索してこのページに辿り着いた人の多くは、手のひらか足の裏に見慣れないものができて、不安な気持ちでいるのだと思う。まず、いちばん誤解されやすいところから書きます。
うつる病気ではありません
膿がたまっているように見えるので、「ばい菌に感染して膿んでいるのではないか」「家族や職場の人にうつしてしまうのではないか」と強く心配する人がとても多い。けれどこの膿の中には、細菌も真菌(カビ)も、病原体は一切含まれていません。
膿疱の中身は、白血球の一種である好中球が、皮膚のいちばん外側の角層にたまったものです。皮疹の中の液体からはウイルスも細菌も見つかっておらず、だからこそ「無菌性膿疱」と呼ばれます。うつりません。握手も、タオルの共用も、お風呂も問題ありません。
どんな病気か
「掌蹠(しょうせき)」とは、手のひら(手掌)と足の裏(足底)を指す医学用語です。その部分に膿疱が繰り返しできる、慢性の皮膚の病気を掌蹠膿疱症と呼びます。
皮疹には決まった変化の順番があります。最初は小さな水疱として現れ、次第に黄色い膿疱に変わり、やがてかさぶたになって、角層がはげ落ちる。特徴的なのは、この各段階の皮疹が混じった状態で経過することです。一か所が治りかけている隣で、別の場所に新しい水疱ができている。だから「治った」と「悪くなった」が同時に起きているように見えます。
出はじめにはかゆみを伴うことも多いとされています。原因はまだ完全には解明されていませんが、皮疹から病原体が見つからないことから、免疫が関係する病気ではないかと推測されています。
どれくらいの人がかかっているか
2010年に厚生労働省のレセプトデータを用いて行われた全国規模の疫学調査では、日本の患者数は136,224人と報告されています。男女比はおよそ1対2で、女性のほうが多い。決してありふれた病気ではありませんが、あなた一人が特別なわけでもありません。
胸や鎖骨が痛むことがあります
慢性的に経過するなかで、突然、鎖骨や胸の中央にある胸鎖肋関節などが痛くなることがあります。これは掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)と呼ばれ、手足の皮膚とはまったく別の場所に出る症状です。
皮膚科に通っているのに胸が痛い、という状況だと、別の病気を心配して内科や整形外科を探してしまいがちです。けれどこれは掌蹠膿疱症と関連している可能性があるので、まず皮膚科の主治医に伝えてください。
「日本人タイプ」と「欧米人タイプ」がある
これは知っておくと、情報の読み方が変わる話です。掌蹠膿疱症には人種差があり、病巣感染が色濃く影響する日本人タイプと、限局性膿疱性乾癬である欧米人タイプがあって、症状も発症のきっかけも異なるとされています。
つまり、英語で書かれた海外の情報を読んだとき、それは欧米人タイプを前提にしている可能性があります。「原因不明で打つ手がない」と書かれた海外サイトを読んで気持ちが沈んだ経験のある人は、その情報が自分に当てはまるとは限らない、という前提で読み直してみてください。日本では扁桃や歯の病巣感染を治療することで改善する例が積み重ねられています。
そして日本人タイプで特に重要なのが、発症のきっかけを取り除かないと、皮膚の症状が消えたあとも骨関節症状がしばしば進行する、という点です。手足がきれいになったから終わり、ではない。このサイトが「症状を外から抑えながら、火種の除去も並行して早めに進める」ことを勧めているのは、この一点に理由があります。
水虫や他の病気とまぎらわしい
足の裏に症状が出た場合、まず疑われるのが水虫(足白癬)です。見た目だけで区別するのは専門医でも難しく、掌蹠膿疱症だと思っていたら水虫だった、という例もあります。水虫は手のひらに出ることはあまりないので一つの目安にはなりますが、これだけで自己判断するのは危険です。
なぜ危険かというと、治療法が正反対になるからです。掌蹠膿疱症の第一選択であるステロイド外用薬を水虫に塗ると、かえって症状が悪化します。市販のステロイドを自己判断で使わないよう勧められているのは、この理由によります。
このほか、かぶれ(接触皮膚炎)や乾癬なども、まぎらわしい病気として挙げられています。
診断のしかた
皮膚科では、問診と視診に加えて検査を行い、他の病気と区別したうえで診断します。代表的なのが、皮膚表面の角層を少し採取して顕微鏡で調べ、水虫の原因となる白癬菌がいるかどうかを確認する検査です。数分で結果が出ます。
そのうえで、悪化因子を探すために、扁桃や歯の状態を耳鼻咽喉科・歯科で調べたり、金属アレルギーのパッチテストを行ったりすることがあります。皮膚科だけで完結しないことがある、というのがこの病気の特徴のひとつです。
ひとりで抱えこまないために
掌蹠膿疱症の患者会として、PPPコミュニティ(PPP community)があります。患者と、患者をサポートする医師・歯科医師などの医療スタッフによって2020年に発足した会で、医学的に正しいと考えられる情報の提供を目的のひとつに掲げています。
このサイトには無い、大きな価値があります。相談医・協力医・連携医の紹介です。何軒も医療機関を回ったのちに、自分でインターネット情報から病名にたどり着いて受診する人が多いという現実があり、「誰にかかったらよいか分からない」という声に応える仕組みが用意されています。治療してくれる医師を探している段階なら、ここを見るのがいちばん確実だと思います。
サイトには英語ページもあり、体験談や医師からの情報も読めます。そしてそこには、はっきりとこう書かれています。掌蹠膿疱症は治る病気です、と。