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トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
オルガン曲を代表する一曲で、劇的な冒頭と16分音符のフーガが続きます。バッハ作とされてきたが、真作性には1981年以来異論もあり、結論は出ていません。
作曲の経緯
BWV565の成立事情は実のところはっきりしません。バッハ自筆譜は残っておらず、近い時期の唯一の資料は、バッハの弟子ケルナーに学んだヨハネス・リンクの写本で、作成は1730年代〜1750年代と資料により幅があります。作曲時期も1704年頃〜1750年代と広く見積もられ、アルンシュタット時代の若書きとする見方もあります。1833年にメンデルスゾーンが構想し部分的に準備した「あまり知られていないオルガン曲」集で初めて出版され、1840年8月6日にはライプツィヒで彼が演奏して評判を呼びました。20世紀にはストコフスキーの管弦楽編曲(1927年)とディズニー映画『ファンタジア』(1940年)で一気に有名になり、オルガン曲を代表する一曲となりました。
出版・初演
初出版は1833年です(メンデルスゾーンが関わった『あまり知られていないオルガン曲』集の第3分冊)。1846年C.F.ペータース、1867年バッハ協会全集(第15巻)、1964年新バッハ全集などで刊行されました。最初の大きな公開演奏は1840年8月6日、メンデルスゾーンによるライプツィヒでの演奏です。
題名・通称の由来
リンク写本の表題は伊語で「Toccata con Fuga」です。同じニ短調の別作品(BWV538)が通称「ドリア調」と呼ばれて区別されていたが、1950年のBWV(バッハ作品目録)刊行以降は番号で呼ばれます。
構成分析
- トッカータ 右手と足鍵盤の有名なオクターヴ重ねのモルデント音型で始まり、減七和音から跳ね上がります。冒頭はニ短調の主和音へ解決し、以降は即興風の音型が続きます。
- フーガ 16分音符のみの主題による4声のフーガです。応答が下属調で行われる点が珍しく、足鍵盤が単独で主題を弾く箇所もあります。終わり近くで変ロ長調の持続和音に至ります。
- 終結部(レチタティーヴォ) わずか17小節の間に5度テンポが変わり、最後はMolto adagioでの短調の変格終止で閉じます。
音楽的特徴
嵐を描いた標題音楽という見方がある一方、ディズニー『ファンタジア』では抽象的な絶対音楽として使われました。ヴァイオリン的な音型や、平行オクターヴ、単純な和声などが真作性をめぐる論点になっています。
演奏のポイント
冒頭のモルデントを含むトッカータの息づかいと、フーガ主題の16分音符の明晰さが聴きどころです。演奏時間は通常9分前後で、リング(Ringk)写本に基づく版では足鍵盤の扱いなどが版により異なります。レジストレーション(音色選択)で印象が大きく変わります。
この音源について(収録エピソード)
ヴァルヒャが1947年夏にARCHIV Produktionのために行った最初の録音がこのニ短調トッカータで、当時はまだ78回転のSP盤でした。LPの登場後にバッハのオルガン作品全集を録音し、のちにステレオで全曲を再録音した際も、1956年にDGが初めて手がけたステレオ録音として選ばれたのはこの曲でした。ジャケットでの扱いも次第に大きくなり、1963年録音は後にDGの『Classic Mania』セットに含まれる唯一のバッハ作品になったといいます(英語版Wikipedia)。なおYouTube音源がどの年の録音かは確認できていません。
音源の投稿元(Helmut Walcha - Topic)はoEmbedで確認済みです。どの年の録音かは未確認です。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ジョン・J・マクレラン(1910)
ソルトレーク・タバナクルのオルガンで録音された最初の商業録音の一つです(短縮版「Toccata and Finale」)。コロンビアから翌年に発売されました。 - ヘルムート・ヴァルヒャ(1947)
ARCHIV Produktionの最初の録音曲です(78回転SP)。のちステレオ全集でも再録しています。 - E.パワー・ビッグス(1955)
BWV565を異なる欧州のオルガン14台で録音し、コロンビアが1枚のアルバムにまとめました。 - レオポルド・ストコフスキー(管弦楽編曲)(1927編曲)
のち『ファンタジア』(1940)で使用されています。
映画・ドラマ・アニメ
- ジキル博士とハイド氏(1931)
BWV565の最初期の音声映画での使用例の一つです。 - 黒猫(The Black Cat)(1934)
ホラー的な使い方です(英語版Wikipediaの記載)。 - ファンタジア(1940)
冒頭の「トッカータとフーガ」です。ストコフスキー編曲で、ほぼ抽象的な映像と共に使用されています。 - 海底二万哩(1954)
ネモ船長がノーチラス号のオルガンで演奏します。 - 夕陽のガンマン(1965)
モリコーネがトッカータの冒頭を引用しています。廃教会での決闘場面で、オルガンが全開で鳴ります。 - ローラーボール(1975)
作品の冒頭と終盤で使用されています。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- BWV538(通称ドリア調のトッカータとフーガ)
- ストコフスキーによる管弦楽編曲(1927)
- ブゾーニ、タウジヒ、レーガーらのピアノ編曲
- 『ファンタジア』(1940)
- 新バッハ全集(Series IV, Vol.6)
同じ作曲者の曲
トリビア
- リンク写本の表題は伊語の「Toccata con Fuga」で、最初の出版(1833年)の表紙にはピアノでの演奏も可能と示されていました。
- 1981年にピーター・ウィリアムズが、原曲はヴァイオリン曲で、後にオルガンへ編曲されたのではないかと提起しました。一方クリストフ・ヴォルフはバッハの作と考え、ツェンダーは「反証がない限りバッハの作品として扱うべき」と述べました。
- BWV565は1940年のディズニー『ファンタジア』の冒頭曲だが、1942年の映画公開版ではカットされ、1946年の再公開で戻りました(英語版Wikipedia)。