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ノクターン第2番
揺れる左手の伴奏の上で、同じ旋律が回帰するたびに装飾を増していく夜想曲です。ショパンの夜想曲の中でも特に広く親しまれています。戻ってきた旋律の、今度はどこが飾られるのでしょうか。小さな違いを見つける喜びがあります。
作曲の経緯
ショパンはポーランドの動乱の中で1831年にパリへ移り、そのまま帰国できなくなりました。作品9の三曲の夜想曲は1830〜31年頃に書かれ(IMSLPは1830-31年)、ショパンにとって初めて出版された夜想曲集です。夜想曲というジャンルはアイルランド出身のジョン・フィールドが築いたもので、アルペジオの伴奏に歌うような旋律を載せる型を持ちます。サロン向けの作品が求められた若い作曲家にとって、格好の形式でした。本曲もフィールドの影響が強いとされますが、旋律が回帰するたびに装飾が増す点には、イタリア・オペラの装飾的な歌唱からの影響が指摘されます。ショパンは再現のたびに自由に変奏して弾いたと伝えられ、弟子の楽譜にも装飾の書き込み例が残ります。なお、具体的な作曲日や直接のきっかけを伝える一次資料は確認できませんでした。
出版・初演
1832年にパリ等で出版されました。ただしモーガン図書館の書誌ではパリのシュレジンジャー版とライプツィヒのキストナー版を「1832?」と疑問符付きで記し、初版を1833年とする記述もあり、出版年は資料間で揺れがあります。初演は未確認です。
題名・通称の由来
「ノクターン(夜想曲)」の語は、夜を指すラテン語Noxに由来し、修道院の晩祷や夜の黙想の意味合いから転じたと考えられています。ピアノ独奏曲のジャンルはジョン・フィールドが始めました。本曲に固有の愛称は確認できず、日本では「ショパンのノクターン」と言えばこの曲を指すことが多いです。
構成分析
- A(主題提示) Andante、変ホ長調、12/8です。弱音でレガートに歌う旋律が、優美な上行の跳躍を伴って始まります。
- A(反復) 主題が繰り返され、装飾音が加わります。
- B(副次旋律) 副次的な旋律がルバートで奏されます。
- A(再現・装飾増)→ B(再現) 主題と副次旋律が再び現れ、そのたびに装飾が増えます。
- A+コーダ 主題が最も装飾された形で戻り、コーダへ進みます。終わり近くの小節にはsenza tempo(テンポなし)の指示があり、リズムの自由度が高いです。全体はA-A-B-A-B-A-コーダ(ロンド風)と見る説と、英語版が示す拡張された二部形式(A,A,B,A,B,A+コーダ)とする説があります。
音楽的特徴
拍子は12/8で、左手は広い音域に配置した分散和音をダンパーペダルでつなぎ、旋律を支える響きの土台にしています。伴奏は12拍を3拍ずつ四つに分けるワルツ風の揺れを緩やかに強調します。右手の旋律は再現のたびにトリルや装飾音で飾られ、イタリア・オペラの装飾的歌唱を思わせます。構造は単純ですが、変奏によって同じ旋律を繰り返しながら表情を変える点が特徴です。一方で、旋律が装飾されて繰り返されるだけで内容は乏しいとする見方もあります。
演奏のポイント
ポイントは、(1)左手を均一に保ちつつペダルで響きをつなぐ、(2)右手の装飾音を拍の中に自然に収めるルバート、(3)再現ごとに装飾を増やしながら歌の流れを切らないこと、(4)senza tempoの小節の処理です。ショパン自身が変奏を加えて弾いたとされるため、版や弟子の書き込み例を参照する演奏者も多いです。
この音源について(収録エピソード)
ランランが少年期から親しんだ小品を集めた『Piano Book』の続編にあたる企画盤に収録されたとされます。DGの紹介動画ページとユニバーサルのプレスリリースがありますが、本文は確認できておらず、録音年・会場・プロデューサー等は未確認です。
音源の投稿元はoEmbedで確認済みです。アルバム名は検索結果の要約によります。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- アルトゥール・ルービンシュタイン(1965(一部1967))
RCA Victor LSC-7050(2LP)、のちRCA Red SealでCD化されています。Stereophile誌のレビューは、飾り気のない素直な歌と、鐘のような右手の音色、繊細なペダリングを評価しています。
映画・ドラマ・アニメ
- バッド・サンタ (Bad Santa)(2003)
オープニング・シークエンスで使われています。演奏はイディル・ビレットと記載されています(二次的な出典のため要再確認)。 - 愛情物語(1956)
主題曲としてカーメン・キャバレロが本曲をアレンジして演奏した『To Love Again』が使用されました。原曲そのものではなくアレンジです。
CM
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- 夜想曲 作品9-1(変ロ短調)・9-3(ロ長調)
- ジョン・フィールドの夜想曲(ジャンルの源流)
- 夜想曲第16番 変ホ長調 作品55-2(同じ変ホ長調の後期夜想曲)
- カーメン・キャバレロ編曲『To Love Again』(1956年映画『愛情物語』主題曲)
同じ作曲者の曲
トリビア
- 台北捷運の松山新店線では、本曲のアレンジが列車接近のメロディに使われています。
- 献呈相手のマリー・プレイエルは、ベルリオーズの元婚約者で、プレイエル社社長カミーユ・プレイエルの妻でした。
- ショパンは再現部で即興的に装飾を変えたと伝えられ、弟子の楽譜にはその変奏例が書き込まれています。