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動物の謝肉祭 第13曲「白鳥」(チェロとピアノ版を中心に)
動物の謝肉祭の中で唯一、作曲者が生前の公開を許した曲です。チェロが水面を滑る白鳥のように静かに歌い、後にバレエ『瀕死の白鳥』でも知られました。
作曲の経緯
1885〜86年のドイツ演奏旅行がうまくいかなかったサン=サーンスは、オーストリアの小さな村にこもり、1886年2月に組曲『動物の謝肉祭』を書き上げました。出版社デュランへの手紙では、本来は第3交響曲に取り組むべきなのに「こんなに楽しい」と打ち明けています。組曲は、チェリストのシャルル・ルブークが開いた私的な演奏会で初演され、タファネルらが参加しました。作曲者は戯れの要素が強い作品が自分の評判を損なうと考え、生前の出版と公開演奏を禁じたが、チェロ独奏の「白鳥」だけは例外で、1887年に自身の編曲したチェロとピアノ1台の版で出版されました。1905年にはフォーキンがこの曲に『瀕死の白鳥』を振り付け、パヴロワが踊って世界的に知られるようになりました。
出版・初演
「白鳥」のみ1887年にチェロとピアノ1台版で生前出版されました。全曲は没後の1922年4月にパリのデュランから出版され、1922年2月25日にピエルネ指揮コンセール・コロンヌが最初の公開演奏を行い熱狂的に迎えられました。私的初演の日付は資料により異なります(英語版Wikipediaは1886年3月3日のルブーク宅の演奏会、日本語版Wikipediaは3月9日)。
題名・通称の由来
動物の謝肉祭の一曲として白鳥を描いたものです。「スワン・ソング(白鳥は死の間際に最も美しく歌う)」という古代ギリシャ以来の俗信に結びつけて、美の儚さを描いた作品と解釈されることがあります。「瀕死の白鳥」の通称は、後にパヴロワのバレエ小品が付けられたことによります。
構成分析
- 導入部 ピアノ2台が細かい分散和音(片方は16分音符のさざ波、もう片方は和音)で水面を描き、その上にチェロが入ります。
- 主旋律 ゆったりとしたチェロの歌が、水面を滑る白鳥を思わせる息の長い旋律線で続きます(全28小節)。
- 終結 静かに旋律が収まり、穏やかに終わります。
音楽的特徴
チェロの長いレガート旋律を、ピアノのほぼ絶え間ない分散和音が支えます。組曲中、風刺や引用の冗談がほぼない真摯な曲で、サン=サーンスが生前に公開を許した唯一の楽章です。チェロ以外にもヴィオラ、ダブルベース、テルミン、声楽(ヴォカリーズ)、ピアノ独奏編曲(ゴドフスキー、ジロティ)など多数の編曲があります。
演奏のポイント
弓の長さを使ったレガートと、ヴィブラートの繊細な加減が聴きどころです。ピアノは水面の揺れを保ちつつ、チェロの歌を邪魔しない音量配分が要になります。
この音源について(収録エピソード)
1978年、ヨーヨー・マは結婚式の翌日、新設されたスポレート・フェスティヴァル(サウスカロライナ州チャールストン)に滞在していたところへ、パリで録音するよう呼び出しの連絡を受けたといいます。指揮はフィリップ・アントルモンで、2台ピアノの一方をアントルモン自身が、もう一方をガビー・カサドシュが弾きました。マは幼少期にパリで育ち、この曲を早い時期に習っており、特別な思い入れがあったと紹介されています。この録音は2007年のアルバム『Appassionato』で最も古い収録曲として再登場しました。
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録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ヨーヨー・マ(チェロ)、フィリップ・アントルモン(指揮・ピアノ)、ガビー・カサドシュ(ピアノ)(1978)
パリで録音されました。マが幼少期に最初に学んだ曲のひとつで、後に2007年のアルバム『Appassionato』に最古の収録曲として入りました。 - ゲイリー・カー(コントラバス)、バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック(1960年代(正確な年は未確認))
バーンスタインの『動物の謝肉祭』録音で、当時20歳のカーがコントラバスで旋律を演奏します(Wikipedia記載)。 - クララ・ロックモア(テルミン)、ナディア・ライゼンバーグ(ピアノ)(20世紀(年は未確認))
テルミンによる演奏です。レガートに適した楽器として定着しています(Wikipedia記載)。
映画・ドラマ・アニメ
確認できた出典はありません。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
教科書・鑑賞教材での掲載を示す出典は確認できませんでした。
関連作品
- 組曲『動物の謝肉祭』全14曲
- フォーキン振付『瀕死の白鳥』(パヴロワ、1905年)
- ゴドフスキーによるピアノ独奏編曲
- イル・ヴォーロ『Notte Stellata (The Swan)』(羽生結弦のエキシビションで使用)
- ヴァン・ヴェーフェルヘムによるヴィオラ/ヴィオラ・ダモーレ編曲(1895年デュラン出版)
トリビア
- サン=サーンスは組曲の生前出版を禁じたが、「白鳥」だけは1887年に出版を許しました。
- パヴロワは『瀕死の白鳥』を約4,000回踊ったと伝えられます(英語版Wikipedia、アルフレッド・フランケンスタインのライナーノーツ引用)。
- 羽生結弦はイル・ヴォーロ版『Notte Stellata』を2011年の東日本大震災の追悼の思いを込めたエキシビション・プログラムとして用いました(英語版Wikipedia)。