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ボレロ
小太鼓の同じリズムに乗せ、2つの旋律を楽器を替えて繰り返し、約15分かけて音量を積み上げるラヴェルの代表作です。1928年にバレエ曲として初演されました。次はどの楽器が歌うのでしょうか。同じ旋律を待つ時間まで楽しくなるのが、この曲の魅力です。
作曲の経緯
1928年、ダンサーのイダ・ルビンシュタインがラヴェルに、アルベニスのピアノ曲集《イベリア》から6曲を管弦楽に編曲するよう依頼したのが発端です。作業中に、指揮者アルボスがすでに編曲済みで著作権上ほかの編曲は難しいと分かりました。アルボスは権利を譲ると申し出たが、ラヴェルは自作の編曲に切り替えようとしたのち、結局スペインの舞曲ボレロに基づく新曲を書くことにしました。サン=ジャン=ド=リュズでの休暇中、友人サマズイユの前でピアノを片手で弾き、「しつこさのある主題だろう。展開せずに何度も繰り返し、オーケストラを少しずつ厚くしていくつもりだ」と語ったと伝わります。1931年のインタビューでは、17分間の「音楽のない管弦楽の織物」、つまり一つの長いクレッシェンドだと自作を説明しています。ラヴェルは大半の楽団が演奏を断るだろうと予想していたが、結果は最も有名な作品となりました。
出版・初演
初演:1928年11月22日、パリ・オペラ座です。バレエとして上演され、振付ニジンスカ、美術・台本ブノワ、指揮ウォルター・ストラムです。楽譜は1929年にパリのデュラン社から出版されました。ラヴェル自身による2台ピアノ版は1930年に出版されました。
題名・通称の由来
スペインの舞曲「ボレロ」にちなみます。楽譜の速度標語が「Tempo di Bolero, moderato assai(ボレロの速度で、非常に中庸に)」です。
構成分析
- リズム 小太鼓が3拍子のリズムを冒頭から最後まで刻み続けます。
- 2つの旋律 どちらも18小節です。第1旋律は全音階的、第2旋律はシンコペーションや下降音を含みフリギア旋法に近いです。交互に8回ずつ反復し、頂点で第1旋律がもう一度(9回目)現れます。
- 楽器の受け渡し フルート、クラリネット、ファゴット、E♭クラリネット、オーボエ・ダモーレ、トランペット、サクソフォン、ホルン、トロンボーン…と旋律の担当が移り、次第に弦や大勢の楽器が加わります。
- 中盤以降の重ね ホルンの旋律にチェレスタやピッコロがG・Eなど別の調で重なり、倍音を補強するように響きが輝きを増します。
- 結尾 練習番号18で突然ホ長調に転じ、8小節ほどでハ長調に戻ります。最後の6小節でバスドラム・シンバル・タムタムが初めて入り、トロンボーンのグリッサンドを伴って閉じます。
音楽的特徴
旋律・リズム・和声がほぼ変わらず、音色(楽器の組み合わせ)と音量だけが変化します。サクソフォンはソプラニーノ(F管)を指定しているが、F管のソプラニーノは実在せず、初演時から変ロ管ソプラノで演奏されてきたと伝えられます。
演奏のポイント
まず①小太鼓の揺るがないテンポに耳を向けたいです。ラヴェルは速くなることを嫌い、1930年のコッポラ録音の立ち会いで終盤が走りかけたところを制止したと、コッポラ本人が回想しています。②楽器ごとの音色の変化(誰がどの旋律を吹くか)を追うと構造が分かりやすいです。③中盤以降の、別の調の重ねによる響きの変化も聴きどころです。④終盤の突然のホ長調への転調と、最後のグリッサンドまで聴き届けたいです。
この音源について(収録エピソード)
DGの表記ではボレロの録音は1985年、同じ盤の《展覧会の絵》は1986年です。盤評サイトMusicWebによれば、この盤の録音はベルリン・フィルハーモニーで1985年12月から1987年2月にかけて行われました。カラヤンはこの曲を1966年のDG録音、1977年のEMI録音に続いて残しており、これはデジタル期の再録音にあたります。評者は、初期のDGデジタル録音には響きが硬いという批判があり、のちの「カラヤン・ゴールド」でリマスターされたと述べます。また、カラヤンはライヴの再現ではなく家庭での鑑賞を念頭に置き、デジタル技術を支持して録音したと指摘しています。この盤は1993年2月15日にカラヤン・ゴールドとしても出ています。
音源の投稿元(Berliner Philharmoniker - Topic)はoEmbedで確認済みです。「未確認」は出典で確認できなかった項目です。
録音
実在と年を出典で確認できたもののみ掲載しています。
- ピエロ・コッポラ指揮 管弦楽団(1930)
1930年1月13日、グラモフォン社への初録音です。ラヴェルが立ち会いました。約15分40秒です。 - ラヴェル自身(ラムルー管弦楽団)(1930)
初録音の翌日、ポリドール社に自ら指揮して録音しました。出だしは四分音符約66で、約15分50秒です。 - レオポルド・ストコフスキ指揮 オール・アメリカン・ユース管弦楽団(1940)
約12分に迫る最速級の演奏として知られています。 - セルジュ・チェリビダッケ指揮 ミュンヘン・フィル(1994)
ケルンでの演奏旅行時のライヴです。約17分53秒です。 - ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィル(1985)
ドイツ・グラモフォン。カラヤン・ゴールドとして再発されました。
映画・ドラマ・アニメ
- Bolero(ジョージ・ラフト、キャロル・ロンバード主演)(1934)
音楽が重要な役割を果たします。作品の知名度を高めた要因の一つとされます。 - アレグロ・ノン・トロッポ(ブルーノ・ボツェット監督)(1976)
地球上の生命の進化を描くアニメーションの場面です。 - 10(ダドリー・ムーア、ボー・デレク共演)(1979)
作中で印象的に使われ、ラヴェルのレコード売上と印税が急増したとされます(推定約100万ドル)。 - Les Uns et les Autres(別題 Boléro)(1981)
ジョルジュ・ドンによるボレロのダンス場面です。 - デジモンアドベンチャー(劇場短編)(1999)
冒頭と、グレイモン対パロットモンの戦闘で使用されています。 - Exit 8(日本映画)(2025)
冒頭と結末の場面で使用されています。 - ボレロ 永遠の旋律(ラヴェルの伝記映画、アンヌ・フォンテーヌ監督)(2024)
サウンドトラックにボレロ(ディルク・ブロッセ指揮、ブリュッセル・フィル)を収録しています。
CM
確認できた出典はありません。
教科書・鑑賞教材
- 中学校音楽科 鑑賞教材「ボレロ」(徳島県教育委員会の学習指導案)
第2・3学年B鑑賞の教材として全3時間で扱う学習指導案です。教科書会社名は文書では確認できませんでした。
関連作品
- ラヴェル《ラ・ヴァルス》
- アルベニス《イベリア》(当初の編曲依頼の対象)
- 映画『ボレロ 永遠の旋律』(2024)
- トーヴィル&ディーンの1984年冬季五輪アイスダンス
- ストラヴィンスキーなど同時代のバレエ音楽
同じ作曲者の曲
トリビア
- ラヴェル自身はこの曲を「形式も展開も転調もほとんどない」と評し、多くの楽団が演奏を拒むだろうと予想していました。実際には彼の最も有名な作品になりました。
- 1930年5月、トスカニーニがニューヨーク・フィルとパリ・オペラ座でこの曲を演奏した際、テンポが速すぎるとラヴェルが不満を示しました。楽屋でのやり取りは複数の証言があり、内容は一致しません。
- 初演の際に客席の女性が「ラヴェルは気が狂っている」と叫び、ラヴェルが「彼女は分かっている」と言ったという逸話があるが、真偽は不確かとされます。