CRATEDIGGIN'CURATED BY DJ NAOYAMAN

Stay Cool

Stay Cool — The Roots|CRATE DIGGIN|DJ Naoyaman
Original graffiti · Designed by DJ Naoyaman

2004

地域 / シーン:Philadelphia

The Roots

「Stay Cool」の引用元をたどると、1993年のDe La Soulと1967年のトランペット奏者が同じ道に現れる。

De La Soulの先に、Al Hirtへ戻る

「Stay Cool」が収められた2004年の『The Tipping Point』は、The Rootsのなかでも受け止められ方が分かれたアルバムだった。前作『Phrenology』の実験性から、より簡潔で親しみやすい曲へ重心を移したと評されたからだ。その変化の中で「Stay Cool」は、発売当時のAllHipHopでも聴きどころに挙げられた。大きな方向転換を論じる評判の中から、一曲に立ち止まるための入口になる。

制作を担ったのはMelvin Lewis。配信クレジットには、ミックスのBob Powers、録音のJon Smeltzも並ぶ。The Rootsというバンド名の内側には、曲ごとに異なる制作陣の組み合わせがある。「Stay Cool」をその単位で捉えると、生演奏の集団というイメージだけでは見えにくい仕事の分担に気づく。Black Thoughtの声を中心に据えた曲を、プロデュース、録音、ミックスの各工程が支えている。

一方、題名の「クールでいろ」は、単なる気楽さの勧めとしてだけは読めない。Albumismが取り上げたBlack Thoughtのヴァースには、警察による暴力や地域の厳しい状況が現れ、逆境の中で平静を保つ姿勢が重なる。親しみやすい形式と社会的な緊張は、同じ曲の中に収まっている。音楽のとっつきやすさから入り、声が何に対して冷静でいようとしているのかへ戻ると、タイトルの意味も変わってくる。

Al Hirtの「Harlem Hendoo」へ戻る道もある。Oliver Wangは2004年6月のSoul Sidesで、「Stay Cool」とDe La Soulの「Ego Trippin’ Pt. 2」を、同じ録音を受け継ぐ曲として並べた。そのうえで、The Rootsによる使用を先輩De La Soulへの目配せと読んでいる。後半はWangの批評であり、制作陣が意図を語った証言ではない。同じ素材へ別々の時代の曲から戻れることが、ここでの具体的な聴き比べの入口になる。

深掘り記事あり · サンプル資料 1 件

Al HirtからDe La Soulを経て届く「Harlem Hendoo」

「Stay Cool」の引用元「Harlem Hendoo」は、Al Hirtの1967年作『Soul in the Horn』に収録されている。再発レーベルBe Withは、作曲家Paul Griffinと編曲家Teacho Wiltshireの関与に触れながら、Hirtのソウル・ジャズへの展開を紹介する。さらに同曲を用いた作品として、De La Soul「Ego Trippin’ (Part Two)」とThe Roots「Stay Cool」をともに挙げている。 この結びつきは後世の発見だけではない。『The Tipping Point』発売前の2004年6月、Soul SidesはAl Hirt、1993年のDe La Soul、そして新曲「Stay Cool」を一つの記事に並べていた。元曲へさかのぼる道と、先に引用したヒップホップ作品を経由する道が、当時から重ねて聴かれていたのだ。The Rootsのサンプリングは、古い録音だけでなく、それを発見し直してきた聴き手の記憶にも接続している。

参考資料:Be With Records — Al Hirt / Soul In The Horn再発解説

評価が割れたアルバムで、二つの評が拾った一曲

2004年7月のAllHipHop評は、『The Tipping Point』を従来よりも正攻法の作品と捉えながら、「Stay Cool」を「Don’t Say Nuthin’」と並ぶ優れた曲として挙げた。Al Hirtの引用とDe La Soulとの関係に触れ、聴き覚えのある素材を新鮮に扱う力を評価している。実験性が控えめになったことを、そのまま創意の後退とは見なさない読み方だった。 同年9月のThe Music Box評はもっと厳しい。アルバム全体には、親しみやすさと平凡さの間で揺れているという不満を示した。それでも「Stay Cool」は、Al Hirtを用いたジャジーな聴きどころとして残されている。アルバムへの総評が一致しなくても、一曲には共通の評価点が見つかる。当時の二つの文章を並べると、この曲が作品全体への賛否を越えて耳に残ったことが分かる。

参考資料:AllHipHop — 2004年7月のアルバム評

制作背景

制作

公式配信はProducer: Melvin Lewisと記載。Bob Powersはミックス、Jon Smeltzは録音。

発売

The Tipping Pointは2004年7月13日発売。

サンプルの履歴

2004年のAllHipHop評と後年のAlbumismがAl Hirt素材とDe La Soulの使用曲を結びつける。

サンプル元

Al Hirt — Harlem Hendoo

Albumismが曲名を明記。当時評もAl Hirt引用を確認。

公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。

サンプル情報は、出典で確認できたものを掲載しています。記載がない場合も、サンプルが使われていないとは限りません。

出典

The Roots — UMG公式配信クレジット

AllHipHop — 2004年7月のアルバム評

Albumism — The Tipping Point回顧

The Music Box — 2004年9月号

Qobuz — The Tipping Point曲別クレジット

Be With Records — Al Hirt / Soul In The Horn再発解説

Soul Sides — Al Hirt、De La Soul、The Rootsを結ぶ2004年の記事

A NOTE FROM THE EDITOR

Old records.
New afternoons.

音楽は、発売された年に閉じ込めておくには、
少しばかりよくできすぎている。

好きな曲を掘る。元になった音をたどる。街や仲間の話に寄り道する。
そうして、いまの自分の耳を、もう一度確かめる。

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