Let Off a Couple

1994
地域 / シーン:New York
Fashionが覚えていたのは、ツアー先で「フルの曲に」「ビデオを」と求められたことだった。
短すぎるからこそ、もっと聴きたいと言われた
『Street Level』の「Let Off a Couple」は1分42秒。「Straight Jacket」と「Rik’s Joint」の間に置かれ、長いヴァースを均等に配分する通常のグループ曲とは別の大きさを持つ。短いから単なる曲間の余白なのではなく、この尺のまま名前と役割を与えられた一曲だ。
短さを考える手掛かりはPsycho Lesの回想にある。Take It Personalで彼は、ビートは好きだったものの自分の歌詞が浮かばず、短いコーラスを受け持って他のメンバーに任せたと説明した。三人の名前が並ぶ曲でも、参加の仕方まで同じである必要はない。この小品には、その柔軟さが凝縮されている。
もともとBeatnutsは、制作側のJujuとLes、中心となるラッパーのFashionという形を想定していたと、両者のインタビューは伝える。完成したグループはその分業を越えていくが、曲ごとに前へ出る人が変わる余地は残った。「Let Off a Couple」は、三人組を固定された三等分ではなく、曲に応じて組み替わる関係として捉える入口になる。
Fashionは、ツアー先でフルの曲やビデオを求められたと回想する。短さが続きを望む反応を生んだ、という本人の記憶だ。延長版の制作計画を意味する話ではない。
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一人が一歩引くことで生まれた形
「Let Off a Couple」がなぜ短いのかを問われたLesは、好きなビートでも自分のヴァースができず、短いコーラスに回ったと話している。これは完成度を妥協したという話より、曲の中で自分が担う位置を選んだという話として読むほうがしっくりくる。 作家として名を連ねるのはJerry Tineo、Lester Fernandez、Bertony Smallsの三人。長いヴァースを持つ人だけが曲を支えるわけではなく、短いフレーズで全体の輪郭を作る参加の仕方もある。短尺の本曲では、その違いが三人組の小さな縮図になる。
三人のラッパーになる前のBeatnuts
Fashionは2014年のUnkut取材で、『Intoxicated Demons』の企画が当初は自分を中心に据えたものだったと振り返った。翌年のLesへの取材にも、自分たちは主に制作を担い、Fashionをリードのラッパーにするつもりだったという説明がある。三人が同じ役割から出発したわけではなかった。 この証言が説明するのはグループの成り立ちであり、「Let Off a Couple」の録音そのものではない。それでも、短いコーラスを選んだLesの話と並べると、本曲の不均等な役割分担を欠落ではなく、制作とラップが行き来するBeatnutsの柔軟な形として理解できる。
制作背景
短尺の独立トラック
1994年盤Street Levelの8曲目。配信版1分42秒。
スタジオ担当
Troy Hightowerは録音・ミックス、Chris Curranはミックスとして記載。
サンプル元
公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。
サンプル元を裏付ける資料がないため、個別名は掲載していない。
出典
Get On Down: Street Level 再発解説
The Beatnuts: Let Off A Couple 公式配信
Take It Personal — Street Level対談(2020年収録/2024年再掲)