Fried Chicken

1994
地域 / シーン:New York
「Fried Chicken」という作業名は、そのまま曲名になった。対談には、短いヴァースを持ち寄る相談も残る。
ビートの名前を残し、八小節ずつ声を持ち寄る
「Fried Chicken」は、Juju、Psycho Les、Fashionの三人で作り上げた1994年の『Street Level』に収められている。1993年の『Intoxicated Demons』EPに続く初のフル・アルバムで、後年の二人組としての姿が定着する前の一曲だ。制作名義はThe Beatnuts。ラッパー集団と制作チームという二つの顔が、まだ切り離されずに並んでいる。
食べ物の名を掲げた題名には、ビートを中心に曲を育てる彼らの感覚が残る。Take It Personalの回想でPsycho Lesは、このビートを自分が作り、最初につけた名前がそのまま完成曲に残ったと説明している。先に物語の題名を決め、それに伴奏をつけたのではない。音を呼び出すための言葉が、レコードの曲名になった。
アルバムの装丁はHank Mobleyの『The Turnaround!』を参照する一方、Lesは後年、自分たちが志向していたのはもっとハードな音楽だったとも語った。ジャズへの視線と荒っぽい自己像は、ここでは矛盾しない。「Fried Chicken」を三人時代の記録として捉えると、洗練か粗さかという二択では説明できないBeatnutsの出発点が見えてくる。
対談の「Fried Chicken」の話題では、各人が八小節ずつラップしようと相談したことも語られる。作業名とともに残る、声の割り振りを考えた場面だ。
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歌詞より先にあった「Fried Chicken」
Take It Personalの対談では、司会者が「Fried Chicken」をV.I.C.の制作曲として紹介しかけると、Psycho Lesが自分のビートだと訂正する。さらに、制作時から「Fried Chicken」と呼んでおり、その名前を変えずに残したという。曲名の由来と、グループ名義の内側にあった個人の仕事が、一つの短い回想で結びつく。 The Beatnutsという共同名義の内側にも、最初の音を作った人と、声を持ち寄る人の関係があった。Lesにとって「Fried Chicken」は完成した歌の説明ではなく、仲間の間でそのビートを指すための名前だった。作業中の呼び名が作品の一部として残るところに、制作チームからグループへと続く彼らの連続性が表れている。
ジャズの装丁、ハードコアの自己像
再発解説が挙げるジャケットの参照元は、サックス奏者Hank Mobleyの『The Turnaround!』。これは『Street Level』というアルバムの視覚的背景であり、「Fried Chicken」がその盤をサンプリングしているという意味ではない。ジャズのレコードを音だけでなく、作品の見せ方まで含めて引き寄せた点に注目したい。 一方、2015年のUnkut取材でLesは、先行曲「Props Over Here」の明るい方向性に当初戸惑ったと振り返っている。彼らが自認していたのはハードコアなグループだった。その発言は本曲の制作談ではないが、穏やかなジャズ・ラップという一つの枠に『Street Level』を収めないための、本人側からの重要な補助線になる。
制作背景
収録位置
Street Levelの10曲目。配信版は3分57秒。
制作と録音
制作はThe Beatnuts。録音Rich Keller、ミックスChris Curran/Troy Hightower。
サンプル元
公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。
サンプル元を裏付ける資料がないため、個別名は掲載していない。
出典
Get On Down: Street Level 再発解説
The Beatnuts: Fried Chicken 公式配信