It's All Real

2003
地域 / シーン:ブルックリン
DJ Premierとの接点を、Pitch Black自身がD&D Studiosでの往来から語る。
隣のスタジオへ渡した、フリースタイルのテープ。
「It’s All Real」の強さは、DJ Premierの名前だけでは説明しきれない。Pitch Blackは2003年の取材で、五人の個性を一つの音へまとめる相性こそがグループの理由だと話している。街の物語、派手さ、笑い、予測できない言葉が交代して現れる構成を、単なる人数の多さではなく、異なる声を同じ看板へ集める技術として聴きたい。
Premierによれば、このビートはもともとRah Diggaのために用意したが、採用されなかったものだった。Pitch Blackが気に入った時点では、曲名へ結びつくスクラッチのフックはまだなかったという。土台を受け渡すだけで終わらず、最後に声の断片を加えて曲の輪郭を決めた。その制作順序を知ると、フックが単なる装飾ではなく、五人を一つの宣言に束ねる役目を持つことが見えてくる。
タイトルの「real」を、売れる音楽への拒絶と読み切るのも早い。当時のメンバーは、ポップな曲に反対しているのではなく、売りたい気持ちと音楽の誠実さを両立したいと説明していた。この曲は狭い陣営の境界線というより、これから何を作っても自分たちで信じられるものにする、という出発点として置かれている。
2005年のAllHipHop取材でG.O.D.は、Premierへ自分たちのフリースタイルを録ったテープを渡した経緯も話している。相手は以前の自主シングルも耳にしており、そこから一緒に作業することになったという。隣室にいたという偶然だけでなく、自分たちの声を届ける行動が「It’s All Real」へつながった。これはPremierのビートの来歴とは別の、MC側から見た出会いの記録だ。
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隣の部屋から始まった共作
Rich Blackと制作していたPitch Blackの部屋は、D&D StudiosでPremierが使う部屋の隣だった。Fastは、隣から聞こえる制作に憧れ、相手の予定が空くのを待っていたと振り返る。 地名やスタジオ名は、完成した盤の背景に印刷されるだけではない。別々の仕事が同じ建物で進むことが、次の共同制作の入口になっていた。「It’s All Real」に続いてFoxy Brown参加の「Got It Locked」も生まれたという証言は、一度の依頼が継続する関係へ変わったことを示す。
届く音と、届かせる仕組み
2005年の取材でG.O.D.は、デビュー盤を出せた喜びと、十分な宣伝支援を得られなかった苦さを同時に語っている。これはレーベル側の説明ではなく、活動していた本人の実感だ。 一方で、インターネットを通じて日本を含む遠方のファンから連絡が来ることにも気づいたという。大きな流通網へ入ることと、実際に聴き手へ届くことは同じではない。この曲の長い余韻を考えるとき、チャートの外側で続いた受け渡しにも目を向けたくなる。
制作背景
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
出典
Pitch Black — It's All Real 正規音源
Pitch Black — AllHipHop interview, 2003
DJ Premier Tells All — interview reprint