In the Flesh

1994
地域 / シーン:Mount Vernon / Soul Brother
歌っていない人との記憶も、「In the Flesh」の制作には残っていた。
Biggieが見ていた、ビートができる時間
『The Main Ingredient』後半の「In the Flesh」は、二人の名前を掲げたアルバムの中に、さらに声の輪を広げる曲だ。主役と伴奏を一対一で考えるより、同じトラックを違う声が使う場面として聴きたい。拍は続いているのに、話者が替わると空間の広さまで変わる。その変化を追うことが曲への入口になる。
Rhino/Elektraの公式配信はPete RockだけでなくC.L. SmoothもProducerとして記している。作る人とラップする人をきれいに二分する説明では、盤に残る役割を落としてしまう。誰がどの工程を担ったかを名前だけで完全に再現することはできないが、少なくとも作品は二人の協働として示されている。
聴き返すときは、ヴァースの始まりと終わりに注意を絞ってみたい。次の声へ移る前に、どれほどの間があるのか。前の言葉の余韻を残して入るのか、それとも拍を踏み直すのか。複数の演者がいる曲では、個々のラップを比べるだけでなく、つなぎ目を聴くことも一つの楽しみになる。曲全体の流れを、声の交代から辿る入口だ。
Pete RockはThaFormulaの取材で、「In the Flesh」のビートを作るところをBiggieが見ていたと語っている。Biggieはアルバムに参加していなくても、その記憶が『The Main Ingredient』を自分にとって特別なものにしたという。2004年にニュースグループへ転載された対談がRapchiveに保存されている。客演クレジットに名前が載ることと、制作の場に居合わせることは別だ。ここではBiggieの歌唱があるのではなく、作る過程を見ていた人との関係を、Pete自身の回想から辿れる。
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見ていたBiggieと、作っていたPete Rock
REVOLTの質問にPete Rockは、Biggieに制作方法を見たいと言われ、その前で「In the Flesh」を作ったと答える。ただし教え込んだのではなく、Biggieは見ていたのだと区別している。ここからBiggieが本曲を共同制作した、あるいは録音に参加したと広げてはいけない。 面白いのは、完成したビートを受け取るMCが、その前の手仕事へ関心を向けた点だ。ヒップホップの協働には、クレジットになる参加だけでなく、互いのやり方を見て刺激を受ける時間もある。この一曲はその接点を伝える。
曲へ言葉を合わせる、二人の往復
同じ取材でPete Rockは、C.L. Smoothにビートを聴かせて書いてもらい、できた言葉を確認し、ときには部分的な変更を求めるという仕事の進め方を説明する。伴奏が完成したら歌詞を乗せて終わり、という一方向の工程ではなかった。 この証言は個別の本曲の全制作過程を特定するものではない。それでも二人の名前が並ぶ作品を聴く際、声と音が互いに調整される関係を意識させてくれる。複数の声が入る本曲でも、流れが途切れずに続く理由を考えるための手がかりになる。
制作背景
1994年の第2作から
『The Main Ingredient』14曲目。
共同の制作表記
公式配信ではPete RockとC.L. Smoothの両名をProducerに掲載。
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
出典
Rhino/Elektra — 「In the Flesh」公式配信
Apple Music — 『The Main Ingredient』作品情報