Rewind

2001
地域 / シーン:New York
Nas本人が明かす、「Rewind」を自分への課題として書いた日のこと。
何も書けない日に、物語を後ろ向きにした。
「Rewind」は2001年の『Stillmatic』に収められたNasの曲。アルバムでは「You’re da Man」の後、「One Mic」の前に置かれている。短い一曲を独立した技巧の見せ場として聴くだけでなく、この前後を続けて聴くと、アルバムが場面を切り替える速度にも注意が向く。
物語は結末から始まり、出来事を逆の順番へ辿る。Westwordの取材が指摘するように、逆転するのは場面の順序だけではなく、物理的な動作の描写でもある。何が起きたかを追うと同時に、どう語ることで時間の向きが変わるのかを聴く。その二つの仕事を聴き手へ渡すラップだ。
公式クレジットにはLarge ProfessorのプロデュースとKevin Crouseの録音が記される。奇抜な構成をNas一人の言葉の実験として閉じず、声を録り、曲として成立させた制作の側にも目を向けたい。逆順の仕掛けと、前へ進んでいく録音の時間。そのずれを保ったまま一曲が終わる。
MasterClassの公開プレビューでNasは、その日は書く題材が見つからず、自分への課題として「Rewind」を考えたと振り返る。Long IslandでLarge Professorと作業し、何も残さず帰りたくないと思って、結末から始める物語を選んだという。本人によれば、出来事だけでなく登場人物の言葉も逆向きに扱い、翌日に聴き返して採用を決めた。長く練り上げた難解な構想というより、行き詰まりに具体的な制約を与えたことで書き進められた、という制作の証言だ。
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似た構成と、実際の着想は別の話
逆順の物語から映画『Memento』を連想することはできる。しかしWestwordの取材でNasは、その映画を見ていなかったとされ、自分で思いついたと答えている。 作品同士の似た手法を比較することと、一方を他方の出典にすることは違う。ここでは映画の影響を決めつけず、ラップの語りだけで時間を組み直す試みとして向き合いたい。
回帰は、商業性そのものへの拒絶ではない
同じ取材でNasは、1980年代に育った音楽への愛着を説明する。一方で、新しいスタイルの音楽で人々が楽しみ、収入を得ること自体を否定してはいない。 『Stillmatic』を単なる昔への復帰と呼ぶより、何を自分の基準として選び直したのかを考える方が近い。「Rewind」の新しい構成と古い音楽への敬意は、その読み方では矛盾しない。
制作背景
収録時間
Apple Musicのアルバム表示は2分13秒。公式YouTubeの動画メタデータは2分14秒。
作者名義
公式音源はNasir Jones、Paul Mitchell、Rick Rubin、Lillian Armstrongを作者として記載。
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
サンプルの曲名単位での照合は未掲載。
出典
Apple Music — Stillmaticの曲順・ジャケット