Life’s a Bitch

1994
地域 / シーン:New York / Hip Hop / Soul
あらかじめ決めた客演ではなかった。AZ自身が振り返る、スタジオでの成り行き。
応援に来たAZが、録音へ加わる。
AZはKhalid Stricklandの取材で、「Life’s a Bitch」への参加は計画していたものではなかったと語る。Nasのスタジオへ行くのは二、三度目。音楽が流れる中で言葉を口にしていると、Nasから録音を促されたという。本人は、それをアルバムの穴埋めにするのかと聞き返したほどだった。後から見える名場面と、その場にいた人の手応えは同じではない。
Nicholas Maltbyの取材では、AZはNasと約一年電話で話してから実際に会い、録音現場には応援のつもりで来ていたと説明している。さらにヴァース中の「schweppervesence」という言葉について、子どもの頃によく見た広告から来たと思う、と振り返った。言葉の響きが口と頭に浮かび、その時の話題に合ったという。大きな人生観だけでなく、記憶に残った広告の一語も、このラップの材料になっている。
人生は厄介だという話に、反対する材料はそう多くない。だが、その話を音楽にしてしまうと、ただの愚痴とは違うものになる。Nasの隣にはAZがいて、さらにOlu Daraの名前がある。重い題名の下に、人の輪郭が並んでいる。
『Illmatic』の一曲を、The Gap BandのYearning for Your Loveまで戻って聴く。同じ音の時間を辿ると、1994年の景色が1980年のレコードに触れていることが見える。過去の音は、慰めだけでなく、新しい言葉の居場所にもなる。
AZの声が気になったら、次は彼のソロへ行けばいい。一曲の客演が、そのまま別の人生への入口になる。厄介な世の中にも、こういう親切な道案内は残っている。私には、それだけでも聴く理由になる。
リスニングノート · サンプル資料 1 件
制作背景
採用音源の版を確認
Illmaticへ繋がる採用音源。曲名と参加者は公式配信の表示を基準にし、映像の公開年と楽曲の発表年を分けて扱う。
サンプル元
The Gap Band — Yearning for Your Love
曲の中心になるソウルの素材。アルバム初出の1980年を基準とし、シングル・公式音源の著作権表記にある1981年とは区別。
サンプル元のYouTube聴き方とエッセイは編者の私見。制作の事実は出典欄を参照。
確認できた代表的なサンプルを掲載。全素材の網羅ではありません。
出典
サンプル関係の確認 — The Gap Band / Yearning for Your Love