Crime & Medicine

2006
地域 / シーン:Brooklyn
Mosの再解釈を頂点としたGlideと、物足りないとしたPitchfork。
同じ「Liquid Swords」で、批評が割れた。
2007年の発売期評を並べると、「Crime & Medicine」への期待の違いがはっきりする。GlideのJack SpilbergはGZA曲の解釈をアルバムの頂点としたが、PitchforkのSean Fennesseyは元曲の言葉の鋭さや強度が欠けると評した。これは二人の批評家の判断であって、どちらかをこの曲の結論にする必要はない。
「Crime & Medicine」は『True Magic』の5曲目。公式配信ではMos Def自身がプロデューサーとして記載される。同時代のレビューが揃って指摘するのは、GZAの「Liquid Swords」との明確なつながりだ。すでに記憶されている伴奏を別のMCが引き受けることで、声そのものの違いが浮かび上がる。
2007年2月のGlide評は、Mosによるこの解釈をアルバムの好場面とした。一方、同年1月のPitchfork評は同じ再利用を厳しく評価している。同じ事実から評価が分かれるところに、この曲を掘る面白さがある。名曲というひとことで結論を借りず、自分の耳で二つの声を比べてみる。
アルバムの外見も通常と違った。AllMusicの発売期レビューは、初回CDが紙のアートワークを持たず、透明ケースとステッカーで流通したことを記録している。装丁をそぎ落とした作品と、よく知られた伴奏へ新しい言葉を置く曲。その両方が、このアルバムをめぐる賛否の風景に残っている。
比較するときは、サンプルの由来だけを当てて終えない。同じ伴奏に対して、声がどこから入り、どれだけ言葉を詰め、どこに間を残すのか。MosとGZAの違いを手がかりにすれば、レコードを掘ることがMCの技法を聴くことにもつながる。
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アルバムに厳しい評者が、この曲を推した理由
GlideのJack Spilbergは『True Magic』全体を無条件に称えたわけではない。出来にばらつきがあるとしながら、「Crime & Medicine」ではMosの滑らかなフローと言葉の運びを評価し、アルバムの頂点に挙げた。 対照的にPitchforkのSean Fennesseyは、同じGZAとの関係を独創性や強度の不足として受け止めた。作品全体への賛否だけで二人を分けるより、借りた伴奏の上でMCに何を期待しているかを比べると、批評そのものが聴き比べの道具になる。
同じ伴奏で、何を新しくできるのか
Apple Musicのクレジットでは、Mos DefがProducer、Dante SmithがSongwriterとして記載される。一方、発売期の批評は「Liquid Swords」の再解釈として曲を論じている。制作名義と、既存の音との関係は、どちらか一方で他方が消える情報ではない。 ここでは新しさを伴奏の交換だけで測らず、言葉の密度、息継ぎ、声が拍へ着地する位置へ問いを移してみたい。GZA版とMos版を比べることは、似ている音を見つける作業から、同じ土台の上で違うMCが何をするかを考える作業へ変わる。
制作背景
Mos自身の制作クレジット
Apple Musicの楽曲別クレジットはMos DefをProducer、Dante SmithをSongwriterと記載する。
Liquid Swordsとの関係
発売期のGlideとAllMusicは、GZAの「Liquid Swords」の再解釈・伴奏使用としてこの曲を説明している。
同時代でも評価はひとつではない
Glideはこの曲を高く評価した一方、Pitchforkは再利用に批判的。海外の古い批評を並べることで、後年の定評だけでは見えない受け止め方を辿れる。
透明ケースで現れたアルバム
AllMusicの発売期レビューは、初回CDが紙のアートワークを持たず、透明ケースとステッカーで流通したことを記録している。
サンプル元
公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。
個別確認中。未掲載はサンプル不使用を意味しない。
出典
Apple Music — Crime & Medicine / 制作クレジット
Glide — True Magic / Jack Spilberg(2007年2月25日)
AllMusic — True Magic / Andy Kellman