Champion Requiem

2004
地域 / シーン:New York
Zilla Roccaの回顧記事は、この曲のラップを一続きの録音として紹介している。
一度のテイクで録ったと伝えられる、最後のヴァース
「Champion Requiem」は2004年の『The New Danger』に収められたMos Defの曲。公式音源はプロデューサーとして88 Keysを、歌詞の作者としてMos Defを記載する。Rawkus周辺の初期作品と連続する人間関係はあるが、作品そのものはGeffenから発表された二作目の時期に属する。年代とレーベルを分けて捉えると、その連続性がむしろ明確になる。
Apple Musicの作品紹介は、本曲の鍵盤と柔らかなギターに注目している。その案内を手がかりにするなら、音の種類を数えるだけでなく、伴奏と言葉の間へ耳を向けたい。声が前へ出るところと、音の輪郭を意識するところを分けて聴く。一曲をアルバム全体の代表に決めつけず、その中にある一つの表情として辿る入口になる。
一度は歌詞の流れを中心に、もう一度は伴奏との関係を中心に聴いてみる。どちらを手前に置くかによって、同じ曲への注意の向け方は変えられる。ジャンル名や活動期の印象を先に当てはめるより、この曲で声がどんな居場所を持つのかを確かめたい。過去の代表作から連なる部分と、このアルバムならではの部分を、自分の耳で探すための一曲だ。
「Champion Requiem」の録音について、ラッパーで批評家のZilla Roccaは2015年の回顧記事で、88-KeysによればMosはヴァースを一度のテイクで録ったと記している。これは制作者の発言をRoccaが伝えた二次資料であり、元のインタビューや録音素材までは確認できていない。記事はアルバムの曲順を筆者が組み直す企画だが、この曲を終点に残している。一続きのラップで終える形を、Roccaがどこに価値を見いだしたかという批評としても読める。
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88-Keysとの関係を、Black Starまで戻してみる
Black Starの口述史で88-Keysが語るのは、「Thieves in the Night」の制作だ。Kweliの詞とToni Morrisonの小説の説明を受けたMos Defが、長いヴァースを書き、短くすることを望まなかったという。 これは「Champion Requiem」の録音話ではない。それでも同じ二人の仕事を遡ることで、MCの構想が曲の長さや形へ介入する関係が見える。88-Keysを単なる伴奏の供給者として扱わず、言葉に応じて曲が変わる現場の一員として考える入口になる。
ジャンルを越える前に、街の境界を越えていた
2009年のSPINでMos Defは、1980年代末から90年代初頭のマンハッタンで、ヒップホップだけでなくパンク、ハウス、ダンスホールが交差する場に惹かれたと回想している。単一の音楽だけで育ったという自己像ではない。 『The New Danger』の幅広さを突然の脱線とだけ呼ぶ前に、この経験を置いてみたい。本曲がその体験を直接歌ったと断定する必要はない。周辺に複数の文化が共存していたという本人の記憶が、アルバムの広がりを読む別の背景になる。
制作背景
発売情報
公式音源は2004年10月12日、Geffen Recordsの作品と記載。
制作名義
88 Keysはプロデューサー兼作詞作曲者、Mos Defは作者として掲載される。
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
サンプル元は未確認。未掲載はサンプル不使用を意味しない。
出典
Apple Music — 『The New Danger』作品紹介