Dead Bent

1999
地域 / シーン:New York
「Dead Bent」の映像は、前へ進む動作と逆向きの動作を別々に撮る実験から生まれた。
一続きのヴァースを、二つの画面にする
『Operation: Doomsday』に収められた「Dead Bent」は、MF DOOMという人物像の初期をたどる一曲だ。DOOMは後年、KMD時代のZev Love Xとは、小説の別の登場人物ほど違うラップの仕方を目指したと説明した。名義を替えるだけではなく、言葉を話す主体そのものを作り直す。その発想が、仮面を単なる衣装ではないものにしている。
2003年のインタビューでは、DOOMはラップを、学校で楽しみのために言葉を書いていた感覚へ戻そうとしたと振り返っている。「Dead Bent」は、手元の録音機材と残っていたレコードから生まれ、Bobbitoへ持ち込まれた。潤沢な制作費から出発した復帰作ではない。何があればもう一度曲を作れるかを、自分の手で確かめるところから、この名前の物語は始まった。
映像監督Adam Bhala Loughは、本曲のサビを挟まない一続きのヴァースに、切れ目のない撮影というアイデアを見いだした。録音された曲の形が、別の作り手の映像の形を決めたのだ。仮面の男を大げさな悪役の舞台へ連れ出すのではなく、部屋から通りへ歩かせる。その小さな日常の動線にも、DOOMというキャラクターは収まってしまう。
映像の実験は、一回の長回しだけでは終わらなかった。監督Adam Bhala Loughは、同じ場面を順方向と逆方向の二通りで撮り、一つの画面の左右に組み合わせることを思いついたと記している。片方は白黒、もう片方はカラーで、色の違いに特別な理由はなく実験だったという。曲の一続きのヴァースに着想を得た構成を、さらに映像の時間のずれへ広げたわけだ。これは監督の制作回想に基づく説明で、掲載動画を実際に再生して確認した報告ではない。
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一続きのラップを、二つの時間で撮る
「Dead Bent」の映像は、DOOMが部屋を出て靴を履き、階段を下り、近所のデリへ向かう道筋を追う。Loughは曲を聴きながら、一つのヴァースに一つのショットを対応させようと考えた。Isaac Hayesのサンプルが反復する曲を、細かいカットで飾るのではなく、動きを途切れさせずに見せるという翻訳だった。 さらに、同じ道筋を前向きと逆向きの動作で撮り、分割画面にした。片方は白黒、もう片方はカラーで、監督によればその選択は実験そのものが目的だったという。二つの画面は同じ人物と場所を共有しながら、同じ時間を進まない。身近な場所だけを使って、日常と奇妙さを同居させる仕掛けになっている。
磨き上げることだけが、完成ではない
Red Bull Music Academyで「Dead Bent」が紹介された後、DOOMは、自分と商業的なラップが同じ音楽を参照していても、録音の方法で違いが生まれると語った。レコードの傷や、十分とはいえないマイクで録った最初の声を、必ずしも取り替えない。資材の不足だけでなく、その時点の録音を作品として引き受ける姿勢があった。 自主性は音作りだけの話ではない。同じ対談で彼は、Bobbitoとの仕事を、一枚を出しても次の作品まで拘束されない関係として振り返る。独立制作を単に音が粗いことと捉えるより、どの録音を残し、誰と次を作るかを自分で決められることとして見ると、初期DOOMの活動が一本につながる。
制作背景
アルバム
Operation: Doomsdayに収録されたMF DOOM自身の制作曲。
映像の発想
制作者の回想は、サビのない一節と反復するIsaac Hayesのサンプルがワンショット映像の発想になったと説明する。
別版
Complete版にはオリジナル12インチ版とインストも別枠で存在する。
サンプル元
公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。
サンプル情報は、出典で確認できたものを掲載しています。記載がない場合も、サンプルが使われていないとは限りません。
出典
Metalface licensed album audio
Apple Music: Operation Doomsday Complete
Filmmaker recollection: Dead Bent video
MusicBrainz: original and album versions