Can't Hold On

2005
地域 / シーン:カリフォルニア/Oxnard
「Push」の裏面には、声入り・ラジオ用・インストの「Can’t Hold On」。
回想の曲にも、三つの盤上の姿がある。
「Can’t Hold On」はMEDのデビュー・アルバム『Push Comes To Shove』に収められた曲だ。アルバム名が前進する力を思わせる一方、Stones Throwが掲載した発売時のレビューは、本曲と「Special」を感傷や回想の側にある曲として捉えている。盤の勢いを止める余白が、MEDの語り手としての幅を見せる。
その内省を、後から加えた別の人格と考える必要はない。2002年のインタビューでMEDは、自分のスタイルをストリートでの経験に根ざすものとし、聴き手に何かを学んでもらうこととMCとしての技量を示すことの両方を挙げていた。技巧を誇る曲と、経験を振り返る曲は、その説明の中では対立しない。
レコードとしての入口も一つではなかった。「Can’t Hold On」は「Push」と組み合わされた12インチにも収録され、ストリート版、ラジオ版、インストゥルメンタルが用意された。アルバムの中で回想に向かう曲が、別の面ではDJが選び、声とビートをそれぞれ扱えるレコードでもあった。作品を通して聴く時間と、一曲を現場へ持ち出す時間がここで交わる。
Stones Throwは、STH2109を無地スリーヴの12インチとして記録している。「Can’t Hold On」には声入り、ラジオ用、インストの三版がある。曲名だけでなく版名にも目を向けると、同じ曲を別の用途へ開く盤の作りが見えてくる。
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持ち歩いていたBDPの一枚
MEDは2002年の取材で、好きなアルバムとしてBoogie Down Productionsの『By All Means Necessary』を挙げ、多くの思い出があり、旅にも持っていくと話していた。一枚のレコードが、移動する日々にも付き添う存在だった。 この証言は「Can’t Hold On」がBDPを引用したという意味ではない。むしろ、過去の音楽と自分の記憶を結びつける聴き手としてのMEDが見える。彼の回想的な曲を、技量だけでなく、経験と音楽の関係から聴くための手がかりになる。
参考資料:MED interview, 2002
DJ Romesと持ち運ぶライブの単位
同じ取材でMEDは、今後のアルバムやツアーについて話し、活動の初期にはDJ Romesと組む予定を語っている。ソロ名義で作品を送り出す構想の中にも、Lootpack周辺で培われた人のつながりがあった。 これはその後の全公演の編成を確認する証言ではない。それでも、発売前に思い描いていたMCとDJの組み合わせへ目を向けると、ソロ・デビューを共同体からの離脱ではなく、そのつながりを携えて活動範囲を広げる計画として捉えられる。
参考資料:MED interview, 2002
制作背景
アルバムの制作陣
デビュー盤全体にはMadlib、Oh No、J Dilla、Just Blazeが参加している。
曲別のプロデュース
CD裏ジャケットの制作クレジットでは、「Can’t Hold On」に当たる4曲目はMadlibの担当曲に含まれる。
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
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