Two for Pay Jay (No Dough, No Show)

2008
地域 / シーン:Oxnard / Beat Konducta
Dillaへの献辞とともに、Vol. 5のカバーにも以前のBeat Konductaから続く履歴がある。
友への組曲を包んだ、使い続けた一枚の紙
「Two for Pay Jay (No Dough, No Show)」は、Madlibが2008年に発表した『Beat Konducta Vol. 5: Dil Cosby Suite』の一曲。続くVol. 6と合わせた42曲は、J.Roccとともに友人J Dillaへ捧げたインストゥルメンタル集だ。大きな一曲へ思いを集約する代わりに、いくつもの短い曲を並べる。その一つとして「Two for Pay Jay」を捉えると、独立したビートと組曲の一場面という二つの位置が見えてくる。
Vol. 5の曲名には「For My Mans」「The Mystery (Dilla’s Still Here)」「The Main Inspiration (Coltrane of Beats)」が並ぶ。献辞、友人の不在、制作上の敬意が、曲名の段階から作品全体を囲んでいる。「Two for Pay Jay」は「The String (Heavy Jones)」と「No More Time? (The Change)」の間に置かれた。単曲の題名だけで意味を決めず、周囲の短編までたどると、追悼の言葉がアルバム全体に分散していることが分かる。
その背景には、2003年のJaylib『Champion Sound』で互いのビートにラップを乗せた関係がある。MadlibにとってDillaは、遠くから敬愛する先人であると同時に、自分の音へ声を返してくれた共同制作者だった。『Beat Konducta』の献辞をこの往復の延長として読むと、音を作り続ける行為そのものが応答になっている。曲の短さの背後には、一枚の追悼盤より前から続いていた共同作業の時間がある。
この曲を収めたVol. 5のカバーにも、使い続けたものの履歴がある。Stones Throwの2008年の制作記録によると、Jeff JankはVol. 1、2、5、6に同じ段ボールを使った。もとはPeanut Butter Wolfの効果音レコードのカバーで、2004年の水漏れのあと屋外に置かれていたものだ。Vol. 5と6ではスプレー塗装も加わったという。Dillaへの追悼という音楽上の主題と、古い紙を使い直す装丁。その二つを同じ意味だと決めつけずに見ると、この組曲には音だけではない具体的な制作の手触りも残っている。
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もう一人の当事者、J.Rocc
Stones ThrowはJ.Roccを、Jaylibのライブすべてでターンテーブルを担当した「第三のメンバー」として紹介している。『Champion Sound』が完成した際には、Dilla、Madlib、Jaylibの楽曲と、その素材になった録音をつないだミックスも制作した。自身のビートを並べる二人とは別に、作品同士の関係を選曲で示す人がいた。その履歴を知ると、後の追悼にJ.Roccの名が並ぶ重みが伝わる。 そのミックスは『Champion Sound』の特典7インチにもなった。B+が考案したパッケージには、ロサンゼルスのMadlibとデトロイトのDillaを別々に撮った写真を重ねる仕掛けがある。まだ二人一緒の写真がない時期に、音のつながりを視覚でも表したものだった。J.Roccによる曲とサンプルの接続、B+による離れた人物像の接続が、Jaylibという関係の見せ方を支えていた。
四枚のジャケットになった一枚の段ボール
Jeff Jankがデザインした『Beat Konducta』Vol. 1、2、5、6のアナログ盤ジャケットは、すべて同じ段ボールをもとにしている。Stones Throwの2008年の記録によると、元はPeanut Butter Wolf所有の効果音レコードのスリーヴだった。2004年の漏水で傷み、裏のポーチに少なくとも一年置かれた後、最初の二巻の装丁に使われたという。 さらに二年が過ぎ、スプレー塗料と増えたカビを伴った同じ表面が、Vol. 5と6へ再び登場した。古びた質感を一から描いたのではなく、実際に変化していく物を繰り返し使ったことになる。既にあるものを取り上げ、新たな作品の表面に置き直すこの方法は、ビート制作と並べて考えると面白い。シリーズの連続性は、巻数だけでなく一枚の紙の経年変化にも刻まれている。
制作背景
初出と合本
Vol. 5は2008年、合本のCDは公式告知で2009年2月10日発売とされる。
献辞
公式BandcampはMadlibとJ.RoccによるJ Dillaへのトリビュートと説明する。
紙の履歴
Jeff Jankが担当したVol. 1、2、5、6のアナログ盤カバーは同じ段ボール由来とレーベルが記録する。
サンプル元
公式音源の公開情報で曲名と投稿者を確認しています。サイト内での実再生は未確認です。
サンプル情報は、出典で確認できたものを掲載しています。記載がない場合も、サンプルが使われていないとは限りません。
出典
Stones Throw — 2008年のジャケット制作記録
Stones Throw — Beat Konducta Vol. 5公式曲順
Stones Throw — Jaylib Vs J Rocc 7インチ解説