The Beginning

2005
地域 / シーン:ニューヨーク
Main、Clean、Instrumentalを備えたシングルから、Large Professorの声とビートの関係へ。
声のない版も、一曲の入口になる。
「The Beginning」は、2005年にPaul Sea Productionsから出た「After School」とのカップリングだ。デジタル版にはMain、Clean、Instrumentalという違いが残る。曲名だけなら再出発の大きな宣言にも見えるが、ここではまず、声入りと声なしを別々に扱えるシングルの具体的な作りに注目したい。ラップ作品であると同時に、DJが使う道具としての顔がある。
Large Professorは後年の取材で、発売するかどうかにかかわらず制作を続け、ビートが言うべきことを思いつかせるときに自分でもラップすると説明している。この証言は本曲だけの制作秘話ではないが、タイトルを「復活」の物語に急いで回収しないための手がかりになる。表に出るレコードの間にも、音を試す日常は途切れていない。
盤の名義にはLarge Proという短い表記が使われ、レーベルにはPaul Seaの名がある。本人によれば、その名前は師匠Paul Cへの敬意を含んでいる。新しい曲を出す行為の中に、以前に受け取った技術や記憶が残る。「The Beginning」は、何もない地点から始めるというより、受け継いだものを携えて次の一枚を作る姿としても読める。
2015年のNPR取材でLarge Professorは、アルバムにインストを挟むのは、ラップが続く中で聴き手にひと息ついてもらうためだと説明した。「The Beginning」のInstrumental版そのものの制作談ではないが、声のない音楽に託した役割を知る手がかりになる。
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Paul Seaという名前に残した師匠
Paul Seaという綴りは、Paul Cの名を別の形で残すためのものだとLarge Professorは説明している。さらに「Sea」には、二人が好きだったThe Meters周辺のSea-SaintやTouss-Seaという名称への連想も重なる。 ただ人名を縮めたレーベル名ではない。師弟の間で共有された聴取体験まで、短い名前に折り畳まれている。このシングルのレーベル表記を読むことは、ビジネスの所在地だけでなく、音楽的な家系をたどることにもなる。
参考資料:Large Professor, Part 2: I Really Live Through This Music — NPR/WEAA
秘密ではなく、受け渡される技術
Large Professorは、Pete Rockからフィルターの使い方の発想を学び、DJ Premierにも伝えたと話している。別の取材では、Paul CがSP-1200へ導き、タイミングの扱いを教えてくれたことを振り返った。 これは「The Beginning」の使用機材を特定する情報ではない。注目したいのは、音の個性が孤独な発明だけで生まれたのではなく、人から人へ渡る工夫に支えられている点だ。受け取った技術を自分の選曲感覚へ結びつけるところに、作家の違いが現れる。
参考資料:Large Professor, Part 2: I Really Live Through This Music — NPR/WEAA / Large Professor — Red Bull Music Academy interview
制作背景
サンプル元
配信元の公開情報では日本を配信対象に含む公式音源です。サイト内での実再生は未確認です。
出典
Large Professor — The Beginning 正規音源
Large Professor — The Beginning / After School
Large Professor, Part 2: I Really Live Through This Music — NPR/WEAA