1, 2 Pass It

1995
地域 / シーン:New York
Steeleが覚えている、「1, 2 Pass It」で先輩たちと並んだ録音。
にぎわうスタジオの卓の陰で、二人は韻を書いていた。
SteeleはWilliam E. Ketchum IIIのHipHopDX取材で、「1, 2 Pass It」の録音時、Tekと卓の後ろに身を低くして韻を書いていたと回想する。人でいっぱいの部屋で二人が立ち上がると、DJ Premierはどこから現れたのかと驚いたという。大勢の名前が並ぶ曲の、その名前になる前の小さな居場所。参加者の顔ぶれだけでは見えない、新人側の記憶からこの集団録音を辿れる。
「1, 2 Pass It」は『The D&D Project』を代表する一曲。Mad Lion、Doug E. Fresh、KRS-One、Fat Joe、Smif-N-Wessun、Jeru the Damajaという面々が、D&D All-Starsの名の下にマイクをつなぐ。固定メンバーのグループが作った通常のアルバム曲というより、同じ制作拠点に集まった人々の接点をレコードにしたポッセ・カットとして聴きたい。
DJ Premierは自身の映像企画『So Wassup?』で、D&DのオーナーDavid LotwinとDoug Gramaが開いた集まりを振り返っている。紹介記事が伝える彼の証言では、その場でビートを作り、ヴァースが用意できた人から録音していく状況だったという。完成品の顔ぶれだけを見ると計画されたスター競演に見えるが、発想の核には、同じ空間にいてすぐ応じられる者同士の競争と交流がある。
人数の多さを情報量として消化するより、一人が終わって次の一人が入る境目に耳を置いてみたい。声質、語尾、言葉の詰め方が変わるたびに、同じリズムの見え方も変わる。Premierの仕事を、各MCのために別々の舞台を用意することではなく、違いを聴き分けられる共通の土台を保つこととして捉えると、この曲の集団性が見えてくる。
1995年の12インチにはAlbum VersionとRemixがあり、どちらもPremierが制作している。さらにアカペラとそれぞれのインストも収録され、ラップとトラックを切り離して考えられる構成だ。まず元の版で声の連なりを覚え、次にリミックスへ進むと、同じ参加者でも伴奏の違いが全体の印象をどう変えるかを比較できる。カップリングのBig C「Look Alive」はDiamond Dの制作で、同じ盤から別のプロデューサーへ掘り進めるのも面白い。
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制作背景
原曲とリミックス
1995年Aristaの12インチはAlbum VersionとRemixを分け、いずれもDJ Premier制作と記載。Big C「Look Alive」はDiamond D制作の別曲。
マイクをつなぐ参加者
Mad Lion、Doug E. Fresh、KRS-One、Fat Joe、Smif-N-Wessun、Jeru the Damajaが参加する。
制作時の回想
DJ Premierの「So Wassup?」での証言を伝えるHotNewHipHop記事は、D&Dの集まりでビートを作り、ヴァースが用意できた人から録音したと報じている。
サンプル元
本人・制作陣の証言と曲別資料を照合。聴き方は資料に基づく編集上の考察。実再生は未検証。
確認できた引用関係のみを掲載。未掲載はサンプル不使用の認定ではない。
出典
1,2 Pass It original1995 US12-inch, Crib Records
The D&D Project single, Groovenut Records
So Wassup? Episode15, DJ Premier
Premier recounts D&D recording session, HotNewHipHop